Tokyo 2020, 取材者の視点, 東京, 馬術, 馬術ニュース — 2021年8月27日 at 6:19 PM

パラ馬術個人競技、グレードIIを制したのは王者ピアソン

8月26日(木)、東京のJRA馬事公苑で2020年東京パラリンピックの馬術競技が開幕した。競技初日となるこの日は5つのグレードのうち、グレードII、IV、Vの個人メダルを争うインディビジュアルテストが行われた。この競技の各グレード上位8人馬は団体戦の後に行われるフリースタイル(個人自由演技)に進出する。

混戦のグレードIIを制したのは、王者リー・ピアソン

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade II
Lee Pearson riding Breezer GBR. Gold medal position.
Photo Copyright :copyright: FEI/Liz Gregg

グレードII、最初に登場したのはアメリカのBeatrice De Lavallette (グレード別世界ランキング6位)&Clarc (14歳/セン/KWPN)。幼少のころから乗馬に親しんでいたが、2016年にブリュッセル空港のテロ事件で下肢を損傷するなどの怪我を負い、リハビリ生活に。それにもめげず復帰をはたし、今回初のパラリンピックの舞台で見事最初から70%超えの高スコア、70.265%を叩き出した。

このグレードのメダル争いはやはり期待の人馬の三つ巴。最初に登場したのは、馬術王国イギリスのGeorgia Wilson (グレード別世界ランキング2位)&Sakura (7歳/牝/オルデンブルグ)。出場予定だったSophie Christiansenの馬が直前の検疫中に体調不良となり、急きょ補欠から繰り上がり出場となった新星。馬術はフィギュアスケートのような採点競技で、グレードIIの経路(テスト)は25項目と4つの総合評価項目から成る。Wilson & Sakuraは最後の採点項目、停止がややぶれて点数が少し下がったものの、2倍の加点がされる常歩(なみあし)や常歩での斜め横歩(よこあし)、そして総括の「騎手の馬術的理解力と技術力、正確さ」で10点満点中7点から8点の得点を記録。結果、72.765%の成績を残した。

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade II
Georgia Wilson riding Sakura GBR. Bronze medal position.
Photo Copyright © FEI/Liz Gregg

デンマーク、ドイツの人馬をはさみ、6番手に登場したのは、オーストリア代表、Pepo Puch&Sailor’s Blue(13歳/セン/ハノーバー)。前回2016年リオパラリンピックでこの種目で金メダルを獲得したPuchは、連覇を狙って競技に挑んだ。彼は2008年乗馬中のけがで脊椎を損傷し、脚での合図が十分できないため鞭2本を駆使。3つ目の項目で円を描いていたところ、馬が何かに驚いて走り出し、制御。この項目は10点中4や3がついた。しかしその後さすが経験者、持ち直して各項目で7.5点や8点を連発。最終的には73.441%の成績を収めた。

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade II
Pepo Puch riding Sailor’s Blue AUT. Silver medal position. photo by FEI(Federation Equestre Internationale)

そして世界ランクトップ3のうち最後に登場したのは11番手、イギリス代表Lee Pearson&Breezer (10歳/セン)。今回が2000年シドニーパラリンピック以来6大会連続出場となる、いわずと知れたマルチ金メダリスト。若馬のBreezerは安定した動きで全体を通して7.5点、8点を得、肝心な2倍得点の項目も同様に高得点だった。結果、見事2位の人馬を約3%も突き放す76.265%で金メダルを獲得した。
銀メダルはPepo Puch&Sailor’s Blue、銅メダルはGeorgia Wilson&Sakuraに確定した。

Lee Pearson―通算12個目の金メダル獲得について
「非常に感激しました。馬場の中で涙ぐみました。本当に長い道のりでした。(Breezerは)自分の厩舎で繁殖し、誕生した馬です。私は父親になりましたが、これまで自分以外の誰かを生かす必要がなかったので、より感情的になりました。
家族が(日本に)来られなかったし、そして若い、すごく敏感な馬に乗っていたということ。この馬は生まれて間もなくから僕のことを知っていて、信頼してくれているんです」

Pepo Puchー2004年オリンピック出場と2020年パラリンピック出場の違いについて
「最終的にはほぼ同じです。選手にとっては障害の有無は関係ありません。大きな家族の一員なんです。特に馬術競技はそういう感じです。戦っているのではなく、ともに助け合っています。オリンピックでもそうです。馬を大事にする、そういう気持ちを持った大きな競技一家なんです。
パラ馬術はオリンピックの馬術とまったく違ったものです。以前は、オリンピックレベルになるよう馬の調教をしていました。今は、馬たちが僕をパラリンピックレベルへと成長させてくれています。役割が逆転しました。馬が嫌がったら誘導することもできないし、何もできません。それが大きな違いです。僕にとってトレーナーは馬たちです。
2008年に事故に遭いました。馬が僕の復活を助けてくれました。敏感なサラブレッドでした。当時、左右を支えてもらわないと椅子に座れないような状態でした。でも、この馬に話しかけたい、そんな気持ちが再び歩けるように体力をつけるきっかけになりました。話しかけると耳を傾け、聞いている。それで自信がついたんです。この馬がいなかったら今も車いすで、自分で動かすことすらできなかったでしょう。馬は人間のために、さまざまなことを授けてくれるんです」

Georgia Wilsonー予想外の出場、予想外のメダル
「まさかメダルが取れるとは思ってもいませんでした。もちろんメダルが欲しい気持ちはありましたが、誰にも言っていませんでした。なんだか説明しづらいような不思議な気持ちです。
今年一番の暑さになるって周りの人に言われて、ああ、まだ暑いうちの前半の出番だなぁと思いました。でもまあ、気にしないようにして、結果は良好でした!
(ピアソン選手と同じクラスということは)あまり考えたことはないです。彼と同じ表彰台に立てて誇りに思います。同じクラスで競技を続け、いつかほんの少しだけでも上に立てる日がくるよう頑張ります。
(直前のエントリー変更について)もちろん補欠なので準備はしていましたが、すごく驚きました。なかなか実感がわきませんでした」

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade II
Pepo Puch (AUT) silver, Lee Pearson (GBR) gold, and Georgia Wilson (GBR) bronze on the podium at the grade 2 individual medal ceremony
Photo Copyright © FEI/Liz Gregg

日本の2人馬、健闘! 宮路&Charmanderがフリースタイル出場決定!

数々の強化合宿や選考大会を経て選抜された、開催国日本の精鋭たち。
グレードIIは2人馬が出場した。最初に9番手で登場したのは日本チーム唯一のパラリンピック経験者、宮路満英(鹿児島県出身。セールスフォース・ドットコム/リファイン・エクインアカデミー、グレード別世界ランキング21位)&Charmander (14歳/セン/KWPN)。途中得点が2倍になる中間常歩(なみあし)からの停止は5名のうち1名の審判が9点をつけるなど高評価も交えた演技。66.824%を記録し、ロシアパラリンピック協会(RPC)のIuliia Poliakova &Romina Powerと同率7位で8位以内に残り、フリースタイル(個人自由演技)出場が決まった。

グレードⅡ宮路満英(セールスフォース・ドットコム/リファイン・エクインアカデミー)は8位。 画像提供:一般社団法人 日本障がい者乗馬協会

最終演技者は新星、吉越奏詞(東京都出身。日本体育大学/アスール乗馬クラブ、グレード別世界ランキング24位)& Hashtag (9歳/セン/KWPN)。途中で速歩(はやあし)のところ馬が勢いづいてしまい減点になった場面もあったが、持ち直して演技を続行。図形の正確さなど、円や三湾曲で7.5点がつくなど良い場面もあり、今後の成長に十分期待がかかる63.823%を記録して競技を終えた。

グレードⅡ吉越奏詞(日本体育大学/アスール乗馬クラブ)も10位と健闘。 ©Kazuyuki OGAWA

宮路満英―リオパラから確実に実力アップ
「馬はよかったです。腕を押さえるゴムが外れ、駈足(かけあし)が速く出てしまったことは残念でした。リオの時は馬に乗せてもらっている感じがありましたが、今日の演技はゴムが外れるアクシデントがありましたが、すぐリカバリーできたと思います。
自由演技ではチャーマンダーに合わせて曲を作りました。曲に負けないように頑張ります!」

吉越奏詞―初めてのパラリンピックに緊張
「あまり良い演技ができませんでした。昨日よりもリズムが悪かったので、心配しながら入りました。前半の演技は良い所はありましたが、課題としていた所がコントロールがうまくできず残念でした。初めてのパラリンピック、この舞台に立てたことは嬉しいです」

グレードIIフリースタイル進出8人馬(8月30 日19時47分開始)
Lee Pearson & Breezer (イギリス)
Pepo Puch & Sailor’s Blue(オーストリア)
Georgia Wilson & Sakura(イギリス)
Heidemarie Dresing & La Boum 20(ドイツ)
Beatrice de Lavalette & Clarc(アメリカ)
Katrine Kristensen& Welldone Dallas(デンマーク)
宮路満英&Charmander (日本)
Iuliia Poliakova & Romina Power (RPC)

*グレードII 経路 https://jrad.jp/wp/wp-content/uploads/2019/07/Ind_2.pdf

競技日程・結果 https://olympics.com/tokyo-2020/paralympic-games/ja/results/equestrian/paralympic-schedule-and-results.htm

詳細競技結果 https://tokyo2020.live.fei.org/

グリーンチャンネル放送予定 https://www.greenchannel.jp/program/tokyo2020_paralympic.html

パラ馬術とは? https://www.parasapo.tokyo/sports/equestrian

一般社団法人 日本障がい者乗馬協会 (JRAD) https://jrad.jp/

(取材協力 一般社団法人日本障がい者乗馬協会 岡崎千賀子、FEI/Rob Howell、編集・校正 望月芳子)

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