関連カテゴリ: Tokyo 2020, 取材者の視点, 夏季競技, 東京, 馬術, 馬術/東京2020 — 公開: 2021年8月29日 at 6:22 PM — 更新: 2021年9月4日 at 7:35 AM

パラ馬術:個人競技グレードⅠ、トランネルがアメリカ待望の金メダル

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8月27日(金)、東京のJRA馬事公苑で2020年東京パラリンピックの馬術競技2日目が行われた。この日は、5つのグレードのうちグレードI、IIIの個人メダルを争うインディビジュアルテスト。この競技の各グレード上位8人馬は団体戦の後に行われるフリースタイル(個人自由演技)に進出する。

グレードIは最重度の障がいを持つライダーたち。馬の歩様(ほよう、歩き方)は常歩(なみあし)のみの演技。各10点審査項目は17項目、総合評価4項目の合計21項目(うち7項目は係数2倍)。
※グレードI経路図https://jrad.jp/wp/wp-content/uploads/2019/07/Ind_1.pdf

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade I
Rihards Snikus riding King of the Dance LAT in the grade 1 individual competition. Silver medal position.
Photo Copyright © FEI/Liz Gregg

グレード別世界ランキングトップ3のうち、最初に登場したのは現在ランキング2位、ラトビアのRihards Snikus & King Of The Dance。RihardsのニックネームはDJ Richie Richで、音楽好きな青年。9歳よりリハビリ目的で乗馬を開始。最初のコーチにパラ馬術の選手として活躍できそうだと見込まれ、練習を始めた。そして2008年ラトビア初のパラ馬術大会に参加し、優勝した経験を持つ。この日の演技は活発な運動で、人馬の調和が抜群、総合評価項目ですべての審判が9点も含む8点以上の評価をつける演技を披露。初めから80.179%を叩き出し、後に続く人馬にプレッシャーをかけた。

続いて4番手に登場したのは、ランキング1位のアメリカのRoxanne Trunnell & Dolton(9歳/セン/ハノーバー)。10歳から乗馬に親しんできたTrunnellは2009年に脳血栓を患い、後遺症が残った。オリンピックからパラリンピックに出場目標を変え、2011年にパラ馬術デビュー。リハビリと練習を続けて今回出場を果たした。
演技は終始安定した常歩(なみあし)で、馬も従順に動き、ここまでの大会を通してのトップスコア、81.464%を記録。一気に優勝候補に浮上した。

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade I
Roxanne Trunnell riding Dolton USA in the grade 1 individual. Gold medal position.
Photo Copyright :copyright: FEI/Liz Gregg

5番手はランキング3位、Sara Morganti & Royal Delight(16歳/牝/ラインランダー)。Morgantiは13歳のころから乗馬に親しみ、馬術大会にも参加。1997年に多発性硬化症(MS)の診断を受けてから競技生活から一時離れたが、2005年よりパラ馬術に転向。一気に成長を見せ、世界選手権などで活躍をしてきた。この日は76.964%を記録し、この時点で3位の位置につけた。

また、アジアを代表してLaurentia Tan & Balestro(10歳/牡/ハノーバー)が登場。2008年北京パラリンピックでデビューし活躍を続けてきた彼女は、脳性麻痺と聴覚障がいを持つ。聞こえない音楽にあわせてフリースタイル自由演技を完璧に演じる姿は、多くの人を魅了してきた。73.964%、暫定5位。さすがの経験者、この日久しぶりの70%超えのスコアを記録した。

トップ3に変更がないまま競技は続き、18番手、最終ライダーのフィンランド代表Katja Karjalainen & Dr.Doolittle(18歳/セン/ハノーバー)が登場。Karjalainenは2008年北京パラリンピックでデビュー。視覚障がいをもつため、目隠しと黄色いアームバンドを着用。Dr.Doolittleとコンビを組み、中央に立つコーラー(位置を確認するためにアルファベットに近づく際に読み上げる役割の人)を活用しながら正確に経路を踏む。安定したペースの常歩で演技を続け、71.893%の成績を収めた。
これによって金メダルはRoxanne Trunnell & Dolton、銀メダルはRihards Snikus & King of the Dance 、銅メダルはSara Morganti & Royal Delightに確定した。Trunnelの金メダルは、アメリカが25年間待ち望んだ待望のメダル。

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade I
Rihards Snikus LAT, Roxanne Trunnell, USA and Sara Morganti ITA on the podium during the grade 1 medal ceremony.
Photo Copyright :copyright: FEI/Liz Gregg

金メダリストRoxanne Trunnellコメント
「自分の前に演技したライダーたちのスコアは知りたくないので、(80%台を記録したSnikusのスコアは)知りませんでした。思った通りの演技ができました。Doltonは素晴らしい馬です。彼はずっと、私と一緒に演技していることを楽しんでいるようでした。誇りに思います。メダル目指してずっと頑張ってきたので、本当にうれしく思います」

グレードI フリースタイル進出トップ8
Roxanne Trunnell & Dolton(アメリカ)
Rihards Snikus & King of the Dance(ラドビア)
Sara Morganti & Royal Delight(イタリア)
Jense Lasse Dokkan & Aladdin(スイス)
Laurentia Tan & Banestro(シンガポール)
Katja Karjalainen & Dr.Doolittle(フィンランド)
Julia Sciancalepore & Heinrich IV(オーストリア)
Vladislav Pronskiy & Silva Le Andro (ロシアパラリンピック委員会)

競技日程、結果 https://olympics.com/tokyo-2020/paralympic-games/ja/results/equestrian/paralympic-schedule-and-results.htm
グリーンチャンネル放送予定 https://www.greenchannel.jp/program/tokyo2020_paralympic.html
パラ馬術とは?https://www.parasapo.tokyo/sports/equestrian
一般社団法人 日本障がい者乗馬協会 (JRAD) https://jrad.jp/

(編集・校正 望月芳子)

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