関連カテゴリ: Tokyo 2020, オンライン観戦会, トラック・フィールド, 義足アスリート, 陸上 — 公開: 2021年9月2日 at 8:40 AM — 更新: 2021年9月9日 at 2:13 PM

義足エンジニア・遠藤謙による「東京パラ注目の義足アスリートの見どころ!(女性編)」

フルール・ヨング(オランダ、25歳)
今一番勢いがある選手は誰かと言われれば、彼女の名前が上がるかと思います。私が初めて彼女のレースを見たのが、2015年のドーハ世界パラ陸上選手権でした。この頃は予選を突破することができない選手で、同じ両足義足で同じオランダのマールーファンライン選手が活躍する一方で、フルール選手はスタートで出遅れ、後半スピードにのってくるものの先頭まではとどかないようなレース展開でした。ただ、この頃から後半に差し掛かった時のスピードには目を引きつけられていました。

2015年ドーハ世界パラ陸上選手権予選

2016年リオパラリンピック予選

2019年ドバイ世界パラ陸上選手権100m決勝

そして2019年ドバイで行われた世界パラ陸上選手権では見事決勝に残り、13.33で7位入賞を遂げました。以前はOttobock社のsprinterというブレードを両足に使っていたのですが、この時から彼女はより大きく重いOssur社のXremeを使うようになり、走り方も動きがコンパクトでありながら、ぴょんぴょん跳ねてストライドが大きくなるようになったと思います。両足義足の選手はスタートから30mほどまでは送れる傾向があるのですが、彼女は細かくステップを刻み、徐々にストライドが大きくなっていき、トップスピードでは誰よりも速く走っています。
この時すでに速くなったなーと思ったものですが、彼女の進化はまだまだ序の口でした。

2021年今年のヨーロッパ選手権では、彼女は12.64という世界記録を樹立し、ライバルのマルレーン選手を退け優勝を成し遂げました。さらには走り幅跳びでも6.14という記録を持っており、こちらも世界記録です。

2021年ヨーロッパ選手権

両足下腿の義足ランナーは通常、段端末加重ができる先天性腓骨欠損で速くなるパターンが最近多いですが、彼女は17才の時にウィルスに感染し、両下腿を後天的に切断しました。走り方を見ても、トップスピードでは一歩一歩力強く踏み出しているところを見ると、断端も非常に強いイメージがあります。ブレードを2019年から変えて、徐々に走り方を習得し、今年一気に爆発的に成長を見せている彼女ですが、東京ではどこまで記録を伸ばすのか、非常に楽しみです。

ソフィー・カムリッシュ|マルレーン・ファン ハンセウィンケル | フルール・ヨング| ベアトリス・ハッツ| キンバリー・アルケマデ

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