
日本の多くの人にとって、近年のパラリンピック観戦の記憶は、コロナ禍と切り離せない。2020年東京大会は無観客で開催され、世界中の観客はテレビやオンラインを通じて競技を見守った。続く2022年北京冬季大会も、依然として厳しい感染対策のもとで行われ、取材陣も「クローズドループ」と呼ばれる管理エリア内だけで行動するという特殊な環境に置かれていた。街を歩くことさえ許されない大会だった。
その状況から一転したのが、2024年のパリ大会である。久しぶりのヨーロッパ開催ということもあり、会場は地元観客で満席となった。ヨーロッパの開催都市では、オリンピック期間中は市民がバカンスで街を離れ、パラリンピックの頃に戻ってくるという傾向がある。パリでも、地元の人々が街に戻り、パラリンピックを自分たちの大会として楽しんでいた。無観客の東京大会を経験した日本人にとって、その光景に羨ましさを感じた体験だ。
もちろん、いまはオンラインで世界中の競技をリアルタイムで観戦できる時代である。クリアな映像で競技を楽しめることは、デジタル時代ならではの魅力だ。しかし、現地で雪や氷の冷たさを感じながら競技を見る体験は、また別の価値を持つ。人間も自然の一部であることを実感できる瞬間である。
そして、日本にはこの秋、「アジア・アジアパラ競技大会(愛知・名古屋2026)」が控えている。アジア最高峰のパラスポーツを、自国で観戦できる貴重な機会だ。ぜひ一度、現地でスポーツの空気を体感してほしい。
リモート観戦を「参加型」にする試み
こうした背景のなかで、パラフォトが呼びかけているのが「増える写真展」である。
この企画は、現地取材で撮影した写真を各地に配信し、学校や公共施設などでプリントして展示していくというものだ。大会期間中、写真は毎日のように増えていく。閉幕の頃には、多くの写真で大会全体を振り返ることができる。
かつて旭川市では、13会場で同時展示が行われた実績もある。
現在は、スマートフォンで高品質な映像を誰もが見ることができる時代。だからこそ、あえて一枚の写真を立ち止まって見る意味もあると考える。競技の瞬間、選手の表情、会場の空気。写真は、その時間を留める。
もっとも、卒業式シーズンと重なるこの時期、学校現場では大規模な展示が難しいという声もあった。そこで今回は、無理のない形での参加も歓迎している。
タブレットやフォトフレームでの展示、あるいはオンラインでの閲覧だけでもよい。写真を通して大会を共有することが、この企画の目的である。
「伝える人」と「受け取る人」
パラリンピックでは、日本から約20社が取材している。メダルの瞬間を撮影すれば、多くの媒体が同じ場面を報じることになる。
そこで、パラフォトは少し違う視点を探したいと考えている。競技の背景、選手の姿、会場の空気。そうした場面を写真で伝えていく。
そして、その写真を展示する人がいる。
それを見る人がいる。
情報があふれる時代だからこそ、「誰が伝え、誰が受け取るのか」を考える機会にもなるだろう。
ミラノ・コルティナから届く写真が、各地で少しずつ増えていく。
その積み重ねが、大会の記憶をかたちづくる。
「増える写真展」は現在、参加者を募集している。
リモート観戦を、もう一歩踏み込んだ“応援”に変える試みである。
<関連リンク>
・増える写真展 参加団体募集
https://www.paraphoto.org/?p=46909
・増える写真展 facebookグループ
https://www.facebook.com/groups/965312489159025






