降りしきる雨のなか「何かがおりてきたのかもしれない」
9月2日に行われた東京パラリンピック5人制サッカー(ブラインドサッカー)5位決定戦日本vsスペインの前半終了間際、日本の右コーナーキックから川村怜が、ファーサイドで待つ黒田智成へ浮き球のパスを出す。自分に向ってくるボールの軌道がイメージできた黒田が右足を振りぬくと、ジャストミートしたボールがゴールネットに突き刺さった。川村と黒田のイメージがシンクロし、浮き球のクロスからのダイレクトシュートという、ブラインドサッカーの歴史で語り継がれるであろうゴールが生まれた。ボールの軌道を直接目で見ることができない黒田や川村が、人間の可能性を追求し練習を積み重ねてきてこそのゴールだった。
最初の決定機はスペインだった。スペインのミゲル・サンチェス・ロペスのシュートはポストに救われる。その後、黒田がゴール前には侵入するもののスペインの激しいチェックにあい、日本はシュートまで持ち込むことができない。そんななかでの待望の先制点。
後半に入ると、スペインが猛攻をしかけてくると、日本は中盤にスペースが空くようになる。「ピッチ上の監督たれ」と高田監督から常々言われていたゴールキーパー佐藤大介が「前がかりになってる」と声を出す。「僕にしか見えない景色がある。黒田が前がかりになっていたがぺース落としてくれと。あのままでは、カウンターで1対1になってしまう。相手のほうが勢いがあるので そこは落ち着いて時間しっかり使って自分たちのリズムを作ろう」と佐藤は感じていた。
佐藤の声に、田中章仁、川村怜、黒田智成、佐々木ロベルト泉に代わり入った園部優月が応え、勝利を目指す。佐藤が時間を使おうと、わざとゆるく転がしたボールがゴールラインを割る前に試合終了の時をむかえ、日本は最終戦に勝利し、初参加のパラリンピックを5位で終えた。
5-6位決定戦 日本 vs スペイン
(校正 望月芳子)