関連カテゴリ: Tokyo 2020, デイレポート, 取材者の視点, 国際大会, 夏季競技, 車いすテニス — 公開: 2021年9月5日 at 3:29 PM — 更新: 2021年9月19日 at 12:33 PM

決勝のライバルが語る、金メダル国枝慎吾の強さ

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 国枝が表彰台の真ん中に帰ってきた。東京パラリンピックの車いすテニス、男子シングルス決勝戦が4日、有明テニスの森で行われ、国枝慎吾(ユニクロ)がトム・エフベリンク(オランダ)を2-0で破り、2大会ぶりに優勝。金メダルが決まった瞬間、目頭をおさえて涙を拭った。

優勝がきまった瞬間の国枝慎吾 写真・山下元気

 アテネ大会から5大会連続出場の絶対王者は、東京パラリンピックで2大会ぶりの王座奪還を狙い、決勝に挑んだ。ここまで全試合をストレートで勝ち上がった国枝は、この日も安定した強さを見せた。コートを上下左右に使って相手を揺さぶりながら、持ち味のバッククロスも冴え渡った。
 
 技術はもちろん、「最後はテクニックでなく、メンタル勝負になる。長年の経験上、分かっていた」と、精神的なコントロールを勝因のひとつに挙げた国枝。実は、ライバルも同じ分析をしていた。

2大会ぶりに優勝した国枝慎吾 写真・山下元気

 パラリンピック3度目の出場で初の決勝に臨んだ、対戦相手のエフベリンクは「慎吾はベストな状態だったと思う。3年前に戦ったときは、もう少し迫ることができたが、今日は2セット目でこちらが(ペースに)のまれてしまった。やはり何度もファイナルを経験している選手で、その経験は大きいと思う。自身はこうした大きな大会での決勝経験をもっと積まないといけない」と話し、プレッシャーの掛かる場面での経験の差を挙げた。

車いすテニス表彰式 写真・山下元気

 だが、国枝も「自分のプレーを疑うこともあったし、焦りもあった」と話す。「俺は最強だ」。ずっと座右の名にしてきたこの言葉を実現させるため、大会期間中は毎日メンタルトレーナーと連絡をとり、何度も自分に言い聞かせた。「コートで、ロッカーで、鏡に向かって、何度も言い聞かせた。最後にはガッツポーズしている自分をイメージして臨みなさいと言われていたので、実現して良かった」と、安堵の表情を浮かべる。自分に打ち勝った彼がかける金メダルは、何よりも輝いていた。

(取材協力 そうとめよしえ)

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