関連カテゴリ: インタビュー, サッカー, ブラインドサッカー, ブラインドスポーツ, ブラサカトップ, ブラサカニュース, 女子, 競技の前後左右, 観戦レポート — 公開: 2022年4月1日 at 1:28 PM — 更新: 2022年5月25日 at 10:50 AM

free bird mejirodaiが初優勝 KPMGカップ ブラインドサッカークラブチーム選手権2022を振り返って

知り・知らせるポイントを100文字で

ブラインドサッカーのKPMGカップ free bird mejirodai初優勝について、試合模様(優勝戦、3位決定戦、準決勝)とともに、園部優月選手、川村怜選手のインタビュー、注目選手の菊島宙選手についてお伝えします。

1ヶ月前になる2022年2月26日(土)27日(日)、KPMGカップ ブラインドサッカークラブチーム選手権2022が富士通スタジアム川崎で開催され、8クラブ( ①第19回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権 上位4チームfree bird mejirodai・buen cambio yokohama・コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ・A-pfeile広島BFC②設立から4年以内のクラブチームより2チーム パペレシアル品川・ツエーゲン金沢BFC③ ①②以外のチームより抽選にてAvanzareつくば、埼玉T.Wings)が参加した。

参加チームによる集合写真 写真 内田和稔

熱戦の末、free bird mejirodaiが初優勝を飾り、Avanzareつくばが準優勝、3位がパペレシアル品川となった。free bird mejirodaiは、第19回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権の優勝と合わせ2冠を飾った。

中川英治新監督の元でパリパラリンピック出場を目指すブラインドサッカー男子日本代表、3月1日に発表された代表強化指定選手には、東京パラリンピック出場選手の他、KPMGカップや日本選手権で活躍したfree bird mejirodai 鳥居健人選手も選出されました。本稿では、KPMGカップについてMVP園部優月選手、川村怜選手のインタビュー含め詳しくお伝えしていきます。

目次

決勝戦:free bird mejirodai 2-0 Avanzareつくば

組織で攻め、組織で守るfree bird mejirodai 

日本選手権で優勝し、準決勝では好敵手パペレシアル品川に勝ち勢いにのるfree bird mejirodaiとクラブチーム選手権優勝3回を誇るAvanzareつくばとの決勝戦。

前半8分、ゴールスローを相手陣内左サイドで受けたfree bird mejirodai丹羽海斗がドリブルで持ち込み、そのままディフェンダー3人をかわしてゴールを決め先制した。

決勝戦での先制ゴールfree bird mejirodai背番号2丹羽海斗 写真 内田和稔

それ以降は両チームともにディフェンス(free bird mejirodaiはダイヤモンド型、Avanzareつくばは逆三角形型)オフェンスの切り替えが早く、一進一退の攻防が続いた。

free bird mejirodaiの攻撃を囲むAvanzareつくばディフェンス 写真 内田和稔

しかし後半17分、相手陣内10m中央付近で得たフリーキックから、園部優月が一度ドリブルで左側に持ち出しディフェンダーを動かした後、右に切り返して思い切り蹴ったシュートはゴールネットを揺らした。

ディフェンダーをかわしてのシュートfree bird mejirodai園部優月 写真 秋冨哲生
決勝戦でゴールを決め全身で喜ぶfree bird mejirodai園部優月 写真 内田和稔

決勝戦はfree bird mejirodaiが2-0でAvanzareつくばに勝って初優勝を飾り8チームの頂点に立った。

優勝 free bird mejirodai 写真 秋冨哲生
準優勝 Avanzareつくば 写真 内田和稔

3位決定戦:パペレシアル品川 7-1 ツエーゲン金沢BFC

パペレシアル品川の圧倒的な攻撃力が炸裂

東京パラリンピック日本代表3人川村怜・寺西一・佐々木 ロベルト泉擁するパペレシアル品川と、前日公式戦初勝利を上げたツエーゲン金沢BFCとの試合。
前半1分、キックオフ直後に相手陣内左サイドでパスを受けたパペレシアル品川の井上流衣がいきなりの先制ゴール。さらに前半6分に右サイドの川村が逆サイドの井上にパスを送り、井上がそのままゴールへとドリブルしてシュートを決めた。そして前半7分には、キックオフ直後に川村怜が相手からボールを奪いドリブルで持ち込みゴール左隅へシュート。攻撃を緩めることなく、前半13分、またもや川村が一旦はGKが弾いたボールを左サイドから再度シュートしてこの試合2点目を奪った。

ハットトリックのパペレシアル品川 川村怜のシュート 写真 内田和稔

前半19分、ゴールスローをツエーゲン金沢BFC若林翼が受けるとディフェンスをかわしゴールを決め、ツエーゲン金沢BFC待望の得点をあげた。しかし、キックオフからのボールを川村がドリブルで持ち込み前半終了間際にゴールを決め、後半へ良い流れを作った。後半も7分、パペレシアル品川寺西一が前線の橋爪竜万に送り、マークを外した橋爪がゴールを決めた。後半18分、左コーナーキックから井上がドリブルで持ち込みゴール。

ハットトリックのパペレシアル品川 井上のシュート 写真 内田和稔

準決勝:free bird mejirodai 3–1 パペレシアル品川

お互いを認め合うチーム同士の一戦

free bird mejirodaiにとって、これまで勝ったことがないパペレシアル品川との一戦。

前半3分にパペレシアル品川ロベルトが退場。その間の前半6分、右コーナーキックからfree bird mejirodai鳥居健人が4人をかわしてゴール。ロベルトが戻ってきたものの怪我のためか本来の動きではないようで、前半15分、またも鳥居が味方からのパスを相手陣左サイドで受け取ると、そのままシュートを放ちゴールを決めた。ロベルトが怪我で負傷したのはパペレシアル品川にとっては痛手となった。

シュートを狙うfree bird mejirodai鳥居(左) 写真 内田和稔

後半4分、free bird mejirodai7番園部が相手GKからのゴールキックを自陣左サイドで撮ると壁づたいにボールを運び、3点目を奪った。

シュートを決めたfree bird mejirodai園部(左) 写真 秋冨哲生

まずは1点を返したいパペレシアル品川、後半9分に自陣左サイド12mからロベルトが浮き球のパスををワンバウンドで川村に送り、川村が振り抜いたシュートはディフェンダー2人の間を抜けてゴールに吸い込まれた。

free bird mejirodaiの選手たちに囲まれながらもドリブル突破しようとするパペレシアル品川 川村怜(中央) 写真 内田和稔

試合結果(最終順位)

優勝 free bird mejirodai
準優勝 Avanzareつくば
第3位 パペレシアル品川
第4位 ツエーゲン金沢BFC
第5位 埼玉T.Wings
第6位 コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ
第7位 buen cambio yokohama
第8位 A-pfeile広島BFC

心の底から嬉しい MVP 園部優月 インタビュー

インタビューに答えるfree bird mejirodai 園部優月 写真 秋冨哲生

Q.優勝おめでとうございます。決勝戦を振り返っていかがですか?
A.前半ちょっとボールの聞こえとか味方同士の声かけとかが上手くいってないところもあって、僕らの動きが100%できてないところが前半にあり、自分としても相手の距離感が上手く掴めていなかったところもあって簡単に抜かれたりというようなこともありましたが、丹羽さんが1点取ってくれてそこから0点で死守して、ハーフタイムの時にみんなで盛り上げなおして切り替えて、そして後半しっかりとリズムを作ってきて自分たちのサッカーができたかなぁと思います。

Q.フリーキックからのゴールどうでしたか?
A.本当に嬉しかったですね。今まで一本前のフリーキック、左の3mくらいからのところからですが、相手を見ることはできるが、やっぱりちょっと焦って枠内にシュートできてなかったところがありました。監督の方から遊び心を持ってやれといってくださったこともあり、落ち着いて、持ち出してファースト(ディフェンス)にきた人をしっかり見てかわして、相手に当たって入ったのでちょっとラッキーなところもありましたが、しっかり相手を見てかわしてシュートとイメージ通りに蹴れたので、それが点に繋がって嬉しかったです。

Q.準決勝後、川村選手に声をかけられてどうだったか?
A.川村選手が「本当に強かった」っていうのを言ってくださったのですが、4人でしっかりと川村選手を止めて、今まで品川にも0−0はあったものの勝つ事はできていなくて、品川ができる前のAvanzareつくばに怜さんとロベルトさんがいる時も勝ててはいなかったので、本当に今回勝つことができて本当に嬉しかったし、やっぱ「強かった」って言ってもらえたのは本当に嬉しかったです。

Q.チームとしての練習は?
A.本当にコロナが流行り始めた時くらいは、最初はオンラインを使ってみんなで筋トレをやったりとか後は本当に部屋の中でボールをとか、僕は代表の方もあったのでそのオンライントレーニングとか。個人的にボールを触る機会はオンラインであったので。コロナ前はチームとして火木土と週3位チームで練習できていましたが、今チームで合わせられるのは休日の2時間ぐらいで、週に1回できるかできないか位のペースでした。個人的には監督と学校のグラウンドを使って毎週2回くらいは練習ができていたので、個人の技術としては練習はできていて、チームとしては集まれていないという

Q.コロナの中でチーム力が上がっているのは奇跡的だと思うが?
A.チーム練習以外にも育成の合宿ですとか、代表の合宿ですとか、それぞれで呼ばれていたりして、そこでサッカーを続けられていたというのはフイールドプレイヤー4人、泉さん含めて5人は本当にそこでサッカーができていたので、その中でも合宿でゲーム形式で同じチームになった時には、さりげなくチームでパスを出したりとか軽く試しながら。ちょっとづつコミュニケーションというところはできていたので。それと後は本当に一番大きいのは、コロナ禍で学校も休校になった時に、言葉で自分の動きとか作戦とかいうとことろを共有できて、そこから自分の技術を上げたところが、プレイコミュニケーション力とかチーム力とかをあげられたので、良いトータルフォットボールができるようになってきたかなと思う。

Q.日本選手権との2冠になりましたがいかがですか?
A.いやぁ、心の底から嬉しいです。今まで本当に、怜さんとか智さんとかもそうですけど、点を取られて終わってたり、ラスト後1分で点決められて負けるっていうのがあったので、全て勝って、日本選手権ではたまハッサーズ、クラブ選手権では品川を倒して優勝できたっていうのは本当に嬉しいです。

Q.個人で強化したいところなど教えてください。
A.特に決勝の入りとか全然距離感を掴めてなくて、それがすく修正できなかったというのもあったので、まず調子悪い時でも修正する力と、後は途中途中特に今日の決勝なんかは気持ちなんか焦っちゃって、一つ一ついつもだったら全然余裕でできるプレーもできなかったり、勝手にパス出したりとか本当にあったので、気持ちの落ち着きとかというところは一番に修正すべきところだと思います。後はキープ力とシュートの確率ですね。

チームとして本気で望めた大会 川村 怜インタビュー

インタビューに答えるパペレシアル品川 川村 怜 写真 秋冨哲生

Q.3位という結果だったが振り返ってどうだったか?
A.やっぱり決勝、優勝を目指してこの大会に挑んだので、今日の準決勝のfree bird mejirodaiとの戦いが非常に個人的にもチームとしても気持ちが入りましたし、国内の大会でここまで本気になれた、ここまで本気になれることもあまりなかったので、今日この準決勝に挑むにあたって、本当に本気で準備できたなぁとは思うので。まぁその結果負けてしまい、それは非常に悔しい結果になりましたが、チームとして本気で挑めた大会で、その結果3位。まだまだチーム力には差があったと思いますし、現状がこの順位だと思いますし、今大会、この試合に参加できなかったチームも全国にたくさんあるので、日本のブランドサッカーのレベルもどんどん向上して非常に盛り上がってきたという実感があります。

Q.組織で守ったり個々の力よりもチームとしての戦術に進化しているように見えるがパラリンピック後にそういう進化を感じたりしているか?
A.まず継続だと思いますね。長年のチームとしてやってきた積み重ねが今日のようなパフォーマンスになったと思うし、やっぱりフィールドプレイヤーの4人、ゴールキーパー含めて5人と、5人が連動してボールを動かして人が動いて組織的にプレイできるっていうのは本当に強みだと思います。ほんと理想的なチームだったなって思います。

Q.頼もしい選手が育ってきていると感じるか?
A.得点力の高い選手もいますし、若くてモチベーション高くて、どんどん伸び盛りの選手もたくさんいて、ただやっぱり国際大会や試合をもっと経験していかないといけないと思うので、外国人に対して自分のパフォーマンスがどこまで発揮できるか?というところを日本代表含めて追及していく必要があるなと思います。

Q.試合後に相手チームfree bird mejirodaiにどんな言葉かけをしたのか?
A.そうですね、やっぱり僕個人としてもこの準決勝にかけてきましたし、本気になれた試合でした。そんな中で相手もまぁマークしてきて、強い気持ちで組織的に戦ってきたと思います。「決勝4人で4点取れよ」全員で一人1点以上取れるだけのポテンシャルがあるので、そういった言葉をかけましたし、「純粋に完敗です、強かったよ」というようなことを伝えました。

Q.今後に向けての目標は?
A.代表での活動がメインになってくると思うので、日本代表として世界で勝利できるように、アジアで優勝できるようにそして世界の舞台でベスト4以上を目指せるような準備をしていきたいと思います。国内でもfree bird mejirodaiようなチームに対して勝利できるように、そういったチーム作りが必要になってくるので、個人としてもチームとしても、もっともっとレベルを上げていく必要があります。

Q.free bird mejirodaiとはシュート力以外のどこに差があったのか?
A.やっぱり練習量ですね。クラブチームのほとんどのチームで週1回の練習、月に4回の練習ですけど、free bird mejirodaiはもっともっと練習ができる週2、3回はできていますし、さらに壁の中でナショトレとか代表チームにも何人かいますし、クラブチーム以外の活動、トップカテゴリの活動も多くて、壁の中でプレイできるというのは有利というか、パフォーマンスを上げるために必要な練習になるので、壁の中でのプレイ経験があるかっていうのは重要だと。そういう選手たちが揃って育成されて揃っているチームでさらにクラブとしても練習量が非常に多いと思うので、そこが強みかなぁと思います。

Q.同じような環境を作るのは難しいと思うが?
A.難しいですね。それぞれ関係や立場が違ったりするので。もちろんモチベーション高くてもっともっとしたいという人はたくさんいるんですけど、練習場所の確保であったり、練習時間の確保、なかなかそういったところでハードルがあって、僕らだけではないが、日本国内のクラブチームのそういった悩みがある中で活動していると思うので、そういうところに差はあるかなぁと思います。それも一つの差になっているかなぁと思います。

Q.free bird mejirodaiの組織的なディフェンスに対抗するイメージは出来ているか?
A.上手にボールを落とし回してちゃんとパスをつなぐなって印象はありました。まぁメンタル的にやられているという感覚はなくて、持たせてるというのは想定していたので落ち着いて対応はできたと思います。ドリブルの突破力がある選手がいて、僕らが対応しきれなかったところがあったので。僕らのアクシデントもあったのでちょっとチーム的に、そういったアクシデントに対して自分たちで立て直しきれなかったところはあると思います。また今大会3試合を通して経験を積んだので、この経験を次に生かそうという話はしています。またfree bird mejirodaiと試合する機会はあるので、そこで今日の経験を生かそうっていうのは共有されてます。

注目選手 女子日本代表 菊島宙

2023年8月にイギリス・バーミンガムで開催される第1回世界選手権での優勝を目指し、新体制での活動を開始した女子日本代表の菊島宙(埼玉T.Wings)は準々決勝こそfree bird mejirodaiにはノーゴールに封じ込められたものの、下位トーナメントのbuen cambio yokohama戦で3点、コルジャ仙台ブラインドサッカークラブからも3点を奪う攻撃力を見せた。さらなる飛躍に期待したい。

並外れたシュート力を持つ埼玉T.Wings 菊島宙(右) 写真 内田和稔

(写真取材 秋冨哲生、内田和稔、編集校正 中村和彦、佐々木延江)

※この記事は2月26日、27日のKPMGカップ時に取材しましたが、弊誌編集チームが北京パラリンピック取材中のため更新ができませんでした。現状を確認・調整し加工修正した記事となります。

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