公開: 2025年8月3日 at 9:27 PM — 更新: 2025年8月20日 at 12:29 PM

開幕まであと100日!デフリンピック、スローガンは 「燃えろ!ALL JAPAN!」

知り・知らせるポイントを100文字で

2025年11月、日本で初開催となる「東京2025デフリンピック」まで、8月3日でちょうど100日となる。
それに先立ち、7月31日に東京都庁で記者会見が行われ、過去最多となる日本選手団391名(男子160名、女子113名、スタッフ118名)が正式に発表された。

旗手には松元卓巳(サッカー男子)と、小倉涼(空手女子)が選ばれ、団長は全日本ろうあ連盟スポーツ委員会 太田陽介委員長が務めることとなった。
1924年パリで始まったデフリンピックは、今回で100周年という節目を迎える。デフアスリートの想いと共生社会実現への期待が交錯する、熱気あふれる会見となった。

男子旗手 松元卓巳(サッカー男子) 写真・秋冨哲生

「覚悟と誇りを持って」

男子旗手 松元卓巳(サッカー/福岡県糟屋郡出身)
サッカー日本代表主将として男子旗手に選ばれた松元は、ゴールキーパーとしてデフリンピックに3大会出場している。主将だった2023年デフサッカー世界選手権大会で、デフサッカー男子日本代表は史上初の準優勝、松元は優秀ゴールキーパー賞に選出された。
手話と声を交えながら、「覚悟と誇り、責任を持って、日本選手団を引っ張っていきたい。聞こえない自分が、ここまで続けてこられたのは、家族や仲間の支えがあったから。今度は、自分が“できる”ことを、次の世代に伝えていきたい。」と語ったその姿には、“競技者”を超えて、“伝える者”としての決意と覚悟がにじんでいた。

女子旗手 小倉涼(空手女子) 写真・秋冨哲生

「ろうの子どもたちに、できるという勇気を」

女子旗手 小倉涼(空手/埼玉県坂戸市出身)
ブラジル大会初出場で形・組手ともに金メダル獲得、という実績を評価されて女子旗手に選ばれた。幼少期に聴覚障害が判明しながらも、競技と向き合い世界の舞台を目指してきた。
「ろうの子が『自分にもできるかも』と感じられるようなきっかけを届けたい。“できない”って思い込みを変える大会にしたい。」
穏やかな笑顔の奥に宿る意志は、目の前の対戦相手だけでなく、その先にいる子どもたちの未来を見据えている。

団長 太田陽介氏(全日本ろうあ連盟 スポーツ委員会委員長) 写真・秋冨哲生

「燃えろ!ALL JAPAN!」

団長 太田陽介氏(全日本ろうあ連盟 スポーツ委員会委員長)
太田氏は、トルコ・エルズルム2023大会(冬季)に続き、今回も団長を務める。
スローガン「燃えろ!ALL JAPAN!」には、「日本全国から集まった選手たちが、ひとつの炎となって燃え上がる。そして、ろう者だけでなく社会全体がつながる、そんな大会にしたい。」という思いを込めた。
ブラジル・カシアス・ド・スル2021大会でのメダル数(30個)を上回る、31個以上全21競技でのメダル獲得を目指す。ロシアやベラルーシの選手が中立参加する可能性に伴うメダル争いの難しさにも言及しつつ、各競技のごとのメダル獲得の可能性を精査した上での目標であると説明した。
日本選手団のユニフォームは、アシックスが製作。パリ2024オリンピック・パラリンピックで日本代表が着用したTEAM JAPAN オフィシャルウェアをベースとしている。
注目競技については「全21競技すべてが素晴らしい」としながらも、特に今回初参加となるテコンドーとレスリングに注目してほしいと語った。

「東京2025デフリンピック公式マスコット」に任命された東京都のスポーツ推進大使「ゆりーと」と共に 写真・秋冨哲生

「聞こえない声」を、社会へ響かせるために

ろう者のスポーツは、競技そのものだけでなく、「見えない壁」とどう向き合うかの物語でもある。情報保障、手話通訳、応援のあり方——。
東京都や関係団体は、手話応援「サインエール」や、国際手話通訳の育成など、理解の輪を広げる取り組みを進めている。
デフリンピックの認知度は、日本財団の調査によると、16.3%(2021年)から38.4%まで上がったが、東京大会の知名度は9.9%。デフリンピックを単に開催するのではなく、デフアスリートや聞こえない・聞こえにくい人たちに対する様々な工夫をしながら進めている。
全日本ろうあ連盟 河原雅浩副理事長は、デフリンピックの競技運営は「伝統的にろう者当事者が中心となっている。東京大会は、聞こえる人・聞こえない人・聞こえにくい人と協働で役割分担している。その状況を、多くの人が会場に来て理解してほしい」と呼びかけた。

全日本ろうあ連盟・河原雅浩副理事長から国旗を託される(左から)小倉と松本 写真・秋冨哲生

東京都スポーツ推進部の渡邉知秀本部長は、「新たな競技の選考や応援支援を通じて、選手がベストを尽くせるよう連携したい」と話し、視覚での応援に向けた環境整備を進める考えを示した。
さらに、元サッカー日本代表で日本障がい者サッカー連盟会長の北澤豪氏は、聞こえないからこそ必要とされる“見る力”について、「状況を“見る”ことで読み取る力、見ることに集中する姿勢は、すべてのアスリートにとって大きな学びになる。東京が“共生社会”のモデルとなるような大会になることを期待している。」

北澤豪氏(日本障がい者サッカー連盟会長) 写真・秋冨哲生

選手たちは、メダルの数以上に「伝えること」に意味を見出している。
そのことに「目を澄ます」社会の姿勢があってこそ、その声なき声は未来へ届いていく。
東京2025デフリンピック開幕まで、あと100日。
『東京2025デフリンピック カウントダウンツアー』が、8月3日(日)、自転車競技の開催地である静岡県からスタートし、3都県(静岡・福島・東京)を巡回する。
静かだが、力強い炎が、今、灯されている。


「燃えろ!ALL JAPAN!」

(写真・秋冨哲生、編集・校正/佐々木延江、中村和彦、宮川里咲)

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