公開: 2025年11月28日 at 21時02分 — 更新: 2025年12月1日 at 12時13分

【サッカー】福島から世界へ、そしてその先へ──東京2025デフリンピック サッカー日本代表メダル報告会

知り・知らせるポイントを100文字で

東京2025デフリンピックで男女とも銀メダルを獲得した日本代表が報告会を開催。悔しさと誇りを語り、2年後の世界一へ向け普及と強化の重要性を示した。

1924年パリ大会から100年となる節目の東京2025デフリンピックで、福島開催の男女サッカー日本代表はともに銀メダルを獲得した。
閉会式から一夜明けた11月27日、JFAサッカー文化創造拠点「blue-ing!」に選手たちが集まり、メダル報告会が開かれた。

「世界一だけを目指してきた」と語る男子、絶対女王アメリカに挑んだ女子。
悔しさをにじませながらも、彼らの言葉には、2年後のデフワールドカップに向けた確かな手応えと、新たな覚悟が込められていた。

デフサッカーの未来を見据えた、節目の一日となった。

当日は、齋藤登男子監督、男子キャプテン松元卓巳、副キャプテン古島啓太、堀井聡太、瀧澤諒斗、山本典城女子監督、女子キャプテン伊東美和、女子代表キャプテン髙木桜花、宮田夏実の9名が登壇した。

東京2025デフリンピックで銀メダルを獲得した男女サッカー日本代表メンバーと両監督。左から宮田夏実・髙木桜花・伊東美和・山本典城女子監督・齋藤登男子監督・松元卓巳・古島啓太・堀井聡太・瀧澤諒斗 JFAサッカー文化創造拠点「blue-ing!」にて。

男子代表──「成長を誇りに思う」「世界一を逃した悔しさは大きい」

齋藤登男子代表監督は、まず率直な心境を語った。

「目標は世界一・金メダルであり、それを達成できなかったこと。そして“負けて大会を終える”のは銀メダリストだけで、その悔しさが大きい。一方で、合宿から大会まで選手とチームが大きく成長し、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたことは誇らしく、指導者として嬉しく感じている」

さらに、デフリンピックを機にした認知拡大への期待を口にした。
「デフスポーツへの理解が広がったのであれば本当に嬉しい。今後の発展にはまず普及が不可欠であり、デフスポーツに理解を持つ指導者の養成は急務である。代表活動だけでなく、普及・育成にも力を注ぎたい」

「合宿から大会まで、選手たちの成長とパフォーマンスを誇りに思う」と語る齋藤登男子代表監督。デフサッカー普及と指導者養成への決意を示した。

山本典城女子代表監督──「基準を上げなければ絶対女王アメリカには届かない」

山本典城女子代表監督も、金メダルに届かなかった悔しさを語った。

「選手たちは過去に経験のないプレッシャーを感じる中で、弱さと向き合いながら決勝までたどり着いた。アメリカには力の差を見せつけられたが、選手たちは最後まで諦めず、持てる力をすべて出し切ってくれた。その姿を心から誇りに思う」

その上で、今後への課題を示した。

「アメリカに追いつき、追い越すためには、日常の基準をさらに上げなければいけない。聞こえない子どもたちが代表を目指し、成長できる環境づくりも、これから進めていきたい」

「決勝のアメリカには正直、実力の差を見せつけられた結果でしたが、本当に今、女子サッカーが持つ力の全てを最後まで諦めずに出してくれたと思っています。その選手たちを本当に誇りに思っています」山本典城女子代表監督

男子選手たち──「一つのミスが勝敗を分けた」「次は必ず世界一へ」

松元卓巳キャプテン「銀メダルをおめでとうと言っていただくが、心の整理がついていない。4年間、世界一だけを見据えてきた。世界は遠かった。一つのミスが勝敗を分けることを痛感した」

「一つのミス、これが本当に大きな勝敗を分けるんだということもすごく感じました」男子キャプテン松元卓巳

古島啓太副キャプテン「毎朝思い出すのは決勝で敗れた光景。その悔しさで涙が出てしまう。しかし、1万5000人の観客の応援という“新しい景色”も与えられた。2年後のデフワールドカップで世界一を取り、サポーターと喜びを分かち合いたい」

「幸せなこともたくさんありました。代表ユニフォームを着れる幸せ。デフリンピックでは総観客数1万5000人の方が見に来てくれました。その応援のサインエール、日本代表チャントの融合の応援、僕らに見えない新しい景色を見せてくれました」副キャプテン古島 啓太(中央)

堀井聡太「悔しさで眠れない日が続いている。2年後のワールドカップでこの悔しさを晴らしたい。未来の選手に経験を伝え、感謝を忘れず、世界一を目指していきたい」

「この結果は本当に悔しい。その悔しい気持ちを2年後のワールドカップで晴らせるようにしたい。そして未来の選手たちに自分の経験を伝えていきながら、世界一取るためにこの経験を大切にして今後世界一を取れるように頑張りたいなと思います。」堀井聡太(中央)

瀧澤諒斗「決勝で流れを変えようとピッチに入ったが、結果は変えられなかった。あの時の涙と空の景色は忘れない。この悔しさを胸に、2年後のワールドカップでぶつけたい」

「 何としても自分が流れを変えたいと試合に入りました。 だけども試合の流れを変えることができず、ホイッスルが鳴りました。あの時、グラウンドに倒れて流した涙、そして見上げた空、あの時の景色は今でも心に残ってます。」瀧澤諒斗(右)

女子選手たち──「日常の基準を上げる」「必ずピッチに戻る」

伊東美和キャプテン「決勝で自分たちのすべてを出し切ったがアメリカに届かなかった。ドクターストップで出場できなかったが、出る選手が100%で戦えるよう支えた。応援の言葉に救われた。2年後は必ずピッチに立ち、日本のゴールを守りたい」

「日常の基準を上げなきゃいけないということを痛感させられました。日常の基準を上げて自分たちがもっともっとレベルを上げなきゃいけない。世界一になるための世界一のトレーニングをしなきゃいけないと思います」女子キャプテン伊東美和

髙木桜花キャプテン「どんな状況でも笑顔と謙虚さを忘れず、10番として強い気持ちでプレーした。今回は結果に結びつかなかったが、決勝では自分たちの攻撃・守備の形が出せた。2年後は得点を取り、優勝につなげたい」

「これまでのアメリカとの対戦では、私たちのプレーが全く通用しなかったです。今大会の決勝ではアメリカを相手に自分たちのやりたい攻撃の形、守備の形が出せたと思っています。2年後の国際大会では、その私たちが目指しているサッカーを体現して、しっかり得点を取って優勝という結果につなげられるように頑張っていきたいと思います」女子代表キャプテン髙木桜花

宮田夏実「けがの影響もあり思うようなプレーができず悔しさが残る。それでも100周年のデフリンピックでピッチに立てたことは幸せだった。16年間続けてきたデフサッカーの歴史の中で、この銀メダルは皆さんとつかんだもの。優勝で恩返しできなかったが、次に向けて努力を続けたい」

「皆さんのおかげでつかみ取ったこの2位のメダルだと思っています。2位のメダルいいですね。たくさんの観客に囲まれてプレーできたことは、デフサッカーを始めたときは想像できなかったのですごく幸せで最高な時間でした」宮田夏実(左)
メダル報告会には、大会を支えた関係団体のトップとともに、デフサッカーの100年とこれからの未来を共有した。左から北澤豪JIFF会長・高橋孝司JDFA代表理事・宮田夏実・髙木桜花・伊東美和・山本典城女子監督・齋藤登男子監督・松元卓巳・古島啓太・堀井聡太・瀧澤諒斗・奥寺康彦JSCC理事長

男子サッカーの結果
予選リーグ 1位通過
日本 8-0 オーストラリア
日本 7-0 メキシコ
日本 0-0 イタリア
準々決勝
日本 2-1 イギリス
準決勝
日本 1-0 アメリカ
決勝
日本 1-2 トルコ

女子サッカーの結果
予選リーグ 2位通過
日本 0-5 アメリカ
日本 6-0 イギリス
日本 3-1 オーストラリア
決勝
日本 0-4 アメリカ

 (編集・校正 佐々木延江)

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