1924年パリ大会から100年となる節目の東京2025デフリンピックで、福島開催の男女サッカー日本代表はともに銀メダルを獲得した。
閉会式から一夜明けた11月27日、JFAサッカー文化創造拠点「blue-ing!」に選手たちが集まり、メダル報告会が開かれた。
「世界一だけを目指してきた」と語る男子、絶対女王アメリカに挑んだ女子。
悔しさをにじませながらも、彼らの言葉には、2年後のデフワールドカップに向けた確かな手応えと、新たな覚悟が込められていた。
デフサッカーの未来を見据えた、節目の一日となった。
当日は、齋藤登男子監督、男子キャプテン松元卓巳、副キャプテン古島啓太、堀井聡太、瀧澤諒斗、山本典城女子監督、女子キャプテン伊東美和、女子代表キャプテン髙木桜花、宮田夏実の9名が登壇した。

男子代表──「成長を誇りに思う」「世界一を逃した悔しさは大きい」
齋藤登男子代表監督は、まず率直な心境を語った。
「目標は世界一・金メダルであり、それを達成できなかったこと。そして“負けて大会を終える”のは銀メダリストだけで、その悔しさが大きい。一方で、合宿から大会まで選手とチームが大きく成長し、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたことは誇らしく、指導者として嬉しく感じている」
さらに、デフリンピックを機にした認知拡大への期待を口にした。
「デフスポーツへの理解が広がったのであれば本当に嬉しい。今後の発展にはまず普及が不可欠であり、デフスポーツに理解を持つ指導者の養成は急務である。代表活動だけでなく、普及・育成にも力を注ぎたい」

山本典城女子代表監督──「基準を上げなければ絶対女王アメリカには届かない」
山本典城女子代表監督も、金メダルに届かなかった悔しさを語った。
「選手たちは過去に経験のないプレッシャーを感じる中で、弱さと向き合いながら決勝までたどり着いた。アメリカには力の差を見せつけられたが、選手たちは最後まで諦めず、持てる力をすべて出し切ってくれた。その姿を心から誇りに思う」
その上で、今後への課題を示した。
「アメリカに追いつき、追い越すためには、日常の基準をさらに上げなければいけない。聞こえない子どもたちが代表を目指し、成長できる環境づくりも、これから進めていきたい」

男子選手たち──「一つのミスが勝敗を分けた」「次は必ず世界一へ」
松元卓巳キャプテン「銀メダルをおめでとうと言っていただくが、心の整理がついていない。4年間、世界一だけを見据えてきた。世界は遠かった。一つのミスが勝敗を分けることを痛感した」

古島啓太副キャプテン「毎朝思い出すのは決勝で敗れた光景。その悔しさで涙が出てしまう。しかし、1万5000人の観客の応援という“新しい景色”も与えられた。2年後のデフワールドカップで世界一を取り、サポーターと喜びを分かち合いたい」

堀井聡太「悔しさで眠れない日が続いている。2年後のワールドカップでこの悔しさを晴らしたい。未来の選手に経験を伝え、感謝を忘れず、世界一を目指していきたい」

瀧澤諒斗「決勝で流れを変えようとピッチに入ったが、結果は変えられなかった。あの時の涙と空の景色は忘れない。この悔しさを胸に、2年後のワールドカップでぶつけたい」

女子選手たち──「日常の基準を上げる」「必ずピッチに戻る」
伊東美和キャプテン「決勝で自分たちのすべてを出し切ったがアメリカに届かなかった。ドクターストップで出場できなかったが、出る選手が100%で戦えるよう支えた。応援の言葉に救われた。2年後は必ずピッチに立ち、日本のゴールを守りたい」

髙木桜花キャプテン「どんな状況でも笑顔と謙虚さを忘れず、10番として強い気持ちでプレーした。今回は結果に結びつかなかったが、決勝では自分たちの攻撃・守備の形が出せた。2年後は得点を取り、優勝につなげたい」

宮田夏実「けがの影響もあり思うようなプレーができず悔しさが残る。それでも100周年のデフリンピックでピッチに立てたことは幸せだった。16年間続けてきたデフサッカーの歴史の中で、この銀メダルは皆さんとつかんだもの。優勝で恩返しできなかったが、次に向けて努力を続けたい」


男子サッカーの結果
予選リーグ 1位通過
日本 8-0 オーストラリア
日本 7-0 メキシコ
日本 0-0 イタリア
準々決勝
日本 2-1 イギリス
準決勝
日本 1-0 アメリカ
決勝
日本 1-2 トルコ
女子サッカーの結果
予選リーグ 2位通過
日本 0-5 アメリカ
日本 6-0 イギリス
日本 3-1 オーストラリア
決勝
日本 0-4 アメリカ
(編集・校正 佐々木延江)






