
大会初日に歴史的な瞬間が生まれた。女子50メートル背泳ぎS11(全盲)に出場した石浦智美(伊藤忠丸紅鉄鋼)が、34.65の好記録で泳ぎ切り、世界新記録を樹立した。
同時に、隣のレーンを泳いだ辻内彩野(三菱商事)もS12のアジア記録(34.21)を叩き出し、日本パラ水泳・女子ブラインドの力強さを披露する幕開けとなった。

世界選手権の悔しさを胸に
石浦は、9月に行われた「トヨタ世界パラ水泳選手権シンガポール2025」で、リレー種目でアジア新記録を樹立し、2つの銅メダルを獲得したものの、個人種目では思うような結果を残せず、「不甲斐ない結果だった」と語っていた。
今大会では「水の感覚を取り戻したい」と、50メートル4種目のスプリントに挑戦。シンガポールでの悔しさを糧に、自らを再び高める舞台とした。

「世界記録が公認されてとても嬉しい」と笑顔を見せつつも、「あくまでもメインは明日の50メートル自由形です」と語り、気を緩めることなく次の種目へ向けて集中を続けている。
その開幕日に石浦が刻んだ世界新記録は、日本パラ水泳の不屈の精神を象徴する出来事であった。
「ロスまではまだ3年。まずはパリで取りこぼしたメダルに挑戦し、来年の自国開催となるアジアパラを目標にしていきます」と石浦は語る。
女子S11の舞台には、世界記録保持者を擁する中国勢が立ちはだかる。アジア大会といえども容易な戦いではない。
それでも石浦は、自らの泳ぎで世界へと再び挑む覚悟を示した。
世界新記録の快挙は、明日のメイン種目、そして次なる挑戦へと続く。

(写真取材・秋冨哲生 取材・校正・川村翼)







