公開: 2025年11月12日 at 1時36分 — 更新: 2025年11月18日 at 13時45分

【水泳】デフスイマーは、光の合図でスタート。日本パラ水泳選手権でデフリンピックへの期待が高まる!

知り・知らせるポイントを100文字で

デフリンピック前最後の公式戦となる、第42回日本パラ水泳競技大会が行われ、デフリンピック日本代表選手を含む聴覚障害のスイマー10人が出場。身体・知的の選手に混じって光の合図でスタートする選手の姿があった。初級パラスポーツ指導員が初めて見たデフスイミングを伝えます。

力強いストロークで泳ぐ男子100m自由形、村岡翼輝(静岡県・JDSA)写真・秋富哲生

第42回日本パラ水泳選手権大会(WPS公認/2025年11月1〜2日、千葉県国際総合水泳場)が開催され、全国から身体・知的・聴覚に障害のある約370名の選手が出場した。聴覚障害のクラス(S15)では、日本代表を選手が東京2025デフリンピック本番を目前に控え最後の公式戦で泳ぎを披露した。
初級パラスポーツ指導員として、地域で障害のある人にスポーツの楽しさを広める活動をする筆者が、初めて取材したパラ水泳の現場からレポートを試みる。

デフリンピックで100mバタフライ、自由形のほか、メダルの狙えるメドレーリレー種目に出場する荒川輝久(岐阜県・JDSA) 写真・秋冨哲生

スタートは「光の合図」で

デフスイマーの競技は、障害のない選手と同じ国際ルールに基づいて行われる。違いは「スタート合図」の方法だ。音による号砲の代わりに「スタートランプ」が用いられ、
①選手がスタート台に乗る「白」
②「テイク・ユア・マーク」の「赤」
③スタートの瞬間を示す「青」
という3段階の色の変化で合図が送られる。

この視覚システムにより、選手全員が同一のタイミングでスタートできる。背泳ぎなど後方を向く種目では、スターターの身振りや光のシグナルを併用することもある。デフリンピックでも、同様の設備が導入される。スタート以外は聴者の競技との差はない。歴史のなかではオリンピック、デフリンピック両大会に出場する選手も存在する。

青く光るスタートランプ。横浜インクルージブ水泳競技大会(7月)写真・秋富哲生

デフリンピック代表が大会新

聴覚障害クラスでは、日本代表の池田伊吹(神奈川・JDSA)が男子100m平泳ぎSB15で大会新記録(1:12.98)を樹立。力強いキックと安定したストロークで水面を切り裂いた。
池田は「デフリンピック本番でも自己ベストを更新したい」と意気込みを語った。

また女子では、デフリンピック日本代表の吉田琉那(愛知県・FUJIMI)、吉瀬千咲(埼玉・東京女子体大)らも大会前の調整期間で課題を克服し、自己ベストを更新しデフリンピックで上位を目指すことを語った。

デフリンピック日本代表の吉瀬千咲(埼玉・JDSA)の泳ぎ。本番は50m自由形、バタフライ、100m自由形とリレー2種目に出場する。 写真・秋富哲生

「光でそろう」スタートが伝えること

パラ水泳の国内の公式大会ではデフスイマーに配慮したスタートランプを常時使用している。デフリンピックでは、その光の合図で一斉に飛び出すとき、スタート台上に緊張感が走ることだろう。「音がなくても公平なスタートができる」という事実を、目の前で、多くの子どもたち、大人にも知ってほしいと感じた。

デフリンピック水泳でのスタートは、誰もが挑戦できるスポーツの在り方への可能性を知らせることができる。その瞬間を、満席の観客の前で目の当たりにできたら、パラリンピックの無観客の無念の一つが晴らせるに違いない。

タイムが示す数字は、努力の結晶。野村空和(神奈川県・JDSA) 写真・秋富哲生

デフリンピック本番まで残り2週間を切り、日本代表選手の調整は終盤をむかえた。今大会には、デフリンピックに選考されなかった聴覚障害のアスリートも出場していた。観客席からとなる彼らも、4年後の開催地はまだきまっていないが代表を目指す夢が高まることと思う。

デフリンピック水泳競技は、11月20日〜25日まで、オリンピック・パラリンピックが行われた東京アクアティクスセンターで開催される(入場無料)。本番では、予選(10:00〜)・決勝(17:00〜)の2レースが行われる。ぜひ足を運んで欲しい。

<参考>
日本デフ水泳協会
https://www.deafswim.or.jp/

(写真取材 秋冨哲生、編集・校正 佐々木延江)

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