公開: 2026年3月17日 at 2時30分 — 更新: 2026年3月17日 at 3時18分

【公式プログラム】音楽がつなぐ「あなたらしさ」 ミラノで響いた歓喜の歌――パラリンピック文化プログラム「Earth ∞ Pieces」

知り・知らせるポイントを100文字で

ミラノ・コルティナ2026パラリンピックの文化プログラムの一環、また日伊国交160年を記念して、3月15日、ミラノ中心部の劇場テアトロ・ダル・ヴェルメで音楽イベント「Earth ∞ Pieces Milano 2026」が開催された。

東京2020パラリンピック開会式のステージアドバイザーを務めた栗栖良依氏が中心となり、イタリアの音楽家や市民とともに創り上げたこの舞台では、障害のある人とない人、プロとアマチュア、国籍や背景の異なる人々が一つの舞台に立ち、ベートーヴェンの「歓喜の歌」を共演した。

演奏をおえた、出演者たちの充実した表情による集合写真 写真。中村 Manto 真人

イベントにはミラノ市議会議員のAlessandro Giungi氏も参加し、次のように語った。

ミラノ市議、Alessandro Giungi氏 写真・中村 Manto 真人

「芸術や文化、音楽は、人々を結びつける力を持っています。身体や精神の条件に関係なく、共にいられる社会をつくることが大切です。そしてスポーツは、社会の中でもっともインクルーシブなものの一つです。」

ミラノで初めて受け入れられた表現

イベントの演出を手がけたアーティスト栗栖さんは、舞台の中で自身の原点を振り返った。

東京2020パラリンピックのレガシーを受け継ぐ企画をミラノで開催した、栗栖良依さん。 写真・中村 Manto 真人

「私はプロのアーティストとして25年以上活動していますが、学生時代は美術の成績があまり良くありませんでした。私の発想は既存の型にはまらなかったからです。」
そんな栗栖さんの表現が初めて高く評価されたのが、若い頃に訪れたミラノだった。
「もしミラノに留学していなかったら、私は自信を持てないままアーティストになることを諦めていたかもしれません。今こうして活動できているのは、イタリアの寛容さと想像力のおかげです。」

日本とイタリア、二つの「調和」

公演後のインタビューで栗栖さんは、今回の国際協働について次のように語った。
「イタリアの皆さんは本当にクリエイティブでした。私のコンセプトに対して次々にアイデアを出してくれて、想像していた以上に大きなコンサートになりました。」

栗栖良依さん(右)と、アナウンサーの岩川佳士乃さん。岩川さんは打楽器のカリンバを担当。「自分らしい演奏ができた」 写真・中村 Manto 真人

今回のテーマは「調和(ハルモニア)」だった。しかし、その意味は国によって少し異なるという。
「イタリアの調和は、デザイン的に整った美しさをつくるのがとても上手です。一方で日本は、違うものがそのまま共存しているような自然な調和の感覚があります。その違いが組み合わさることで、とても面白いコンビネーションが生まれました。」
異なる文化の価値観が交差することで、新しい表現が生まれる――。その過程自体が、パラリンピックの理念と重なるものだった。

世界へ広がる可能性

今回のプロジェクトは、今後さらに国際展開する可能性も見えてきた。
「すでにいくつかの国から声をかけてもらっています。海外を巡りながら、その土地ごとに新しい出会いがあり、プロジェクトも変化していくと思います。」

日本からの出演者。彼らを含む役44名が参加した。演奏後の表情 写真・中村 Manto 真人

そして栗栖さんの視線は次の舞台にも向いている。
「今年はアジアパラリンピックの開閉会式という大きなプロジェクトがあります。本来なら3〜4年かけて作るものを10か月で作らなければならない厳しい状況ですが、今回イタリアで得た経験を糧に、必ず面白い開閉会式をつくりたいと思っています。」

違いがあるから、世界は面白い!

舞台の最後に栗栖さんは、観客にこう呼びかけた。
「自然界の生き物がそうであるように、違いがあるからこそ、互いに掛け合わせることで新しい世界が生まれます。」

ミラノの劇場に響いた歓喜の歌は、ミラノ・コルティナ2026パラリンピックが掲げる「あなたらしさ」というテーマを音楽で示す試みでもあった。

会場となったミラノ市街のTeatro Dal Verme 写真・中村 Manto 真人

スポーツ、芸術、文化。
それぞれの違いが交わる場所から、インクルーシブな社会のイメージが少しずつ形を見せている。

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