東京2020パラリンピック開会式のステージアドバイザーを務めた栗栖良依氏が中心となり、イタリアの音楽家や市民とともに創り上げたこの舞台では、障害のある人とない人、プロとアマチュア、国籍や背景の異なる人々が一つの舞台に立ち、ベートーヴェンの「歓喜の歌」を共演した。

イベントにはミラノ市議会議員のAlessandro Giungi氏も参加し、次のように語った。

「芸術や文化、音楽は、人々を結びつける力を持っています。身体や精神の条件に関係なく、共にいられる社会をつくることが大切です。そしてスポーツは、社会の中でもっともインクルーシブなものの一つです。」
ミラノで初めて受け入れられた表現
イベントの演出を手がけたアーティスト栗栖さんは、舞台の中で自身の原点を振り返った。

「私はプロのアーティストとして25年以上活動していますが、学生時代は美術の成績があまり良くありませんでした。私の発想は既存の型にはまらなかったからです。」
そんな栗栖さんの表現が初めて高く評価されたのが、若い頃に訪れたミラノだった。
「もしミラノに留学していなかったら、私は自信を持てないままアーティストになることを諦めていたかもしれません。今こうして活動できているのは、イタリアの寛容さと想像力のおかげです。」
日本とイタリア、二つの「調和」
公演後のインタビューで栗栖さんは、今回の国際協働について次のように語った。
「イタリアの皆さんは本当にクリエイティブでした。私のコンセプトに対して次々にアイデアを出してくれて、想像していた以上に大きなコンサートになりました。」

今回のテーマは「調和(ハルモニア)」だった。しかし、その意味は国によって少し異なるという。
「イタリアの調和は、デザイン的に整った美しさをつくるのがとても上手です。一方で日本は、違うものがそのまま共存しているような自然な調和の感覚があります。その違いが組み合わさることで、とても面白いコンビネーションが生まれました。」
異なる文化の価値観が交差することで、新しい表現が生まれる――。その過程自体が、パラリンピックの理念と重なるものだった。
世界へ広がる可能性
今回のプロジェクトは、今後さらに国際展開する可能性も見えてきた。
「すでにいくつかの国から声をかけてもらっています。海外を巡りながら、その土地ごとに新しい出会いがあり、プロジェクトも変化していくと思います。」

そして栗栖さんの視線は次の舞台にも向いている。
「今年はアジアパラリンピックの開閉会式という大きなプロジェクトがあります。本来なら3〜4年かけて作るものを10か月で作らなければならない厳しい状況ですが、今回イタリアで得た経験を糧に、必ず面白い開閉会式をつくりたいと思っています。」
違いがあるから、世界は面白い!
舞台の最後に栗栖さんは、観客にこう呼びかけた。
「自然界の生き物がそうであるように、違いがあるからこそ、互いに掛け合わせることで新しい世界が生まれます。」
ミラノの劇場に響いた歓喜の歌は、ミラノ・コルティナ2026パラリンピックが掲げる「あなたらしさ」というテーマを音楽で示す試みでもあった。

スポーツ、芸術、文化。
それぞれの違いが交わる場所から、インクルーシブな社会のイメージが少しずつ形を見せている。






