
女子200m自由形 A決勝:わずか0.2秒、2ポイント差の大接戦
同じS14クラス(知的障害)のスイマーたちが直接タイムで競い合う熱い展開となったのが、女子200m自由形だ。タイのKhajhonmatha Nattharineeと日本のエース・木下あいらが激しいトップ争いを繰り広げた。

1位:Khajhonmatha Nattharinee(タイ / S14) タイム:2分13秒59(918ポイント)、2位:木下あいら(日本 / S14) タイム:2分13秒79(916ポイント)、3位:Chan Yui Lam(香港 / S14) タイム:2分15秒84(889ポイント)、4位:佐藤璃來(日本 / S14) タイム:2分17秒67(865ポイント)。
タイのKhajhonmathaにわずか0.2秒差で敗れた木下だが、指定難病である「再生不良性貧血」からの国際復帰戦であり、医師と対話しながら調整しての出場だった。「200m自由形は復帰して初めてで、体力が厳しいレースでした。シーズンの目標はアジアパラでの金メダルですが、少しでもベストに近い泳ぎができればというのが実際の思いです」と、厳しい状況下での確かな手応えを口にした。現在は、現在は個人登録選手として競技を続けている。
男子100m自由形 A決勝:山口、鈴木が共に表彰台へ
日本のエース山口尚秀(四国ガス/S14)と、重度クラスのベテラン鈴木孝幸(ゴールドウイン/S4)が、香港やポーランドの強豪と表彰台を争った。

1位:山口尚秀(日本 / S14) タイム:53秒45(963ポイント)、2位:Tang Wai Lok(香港 / S14) タイム:54秒12(942ポイント)、3位:鈴木孝幸(日本 / S4) タイム:1分23秒43 (916ポイント)、4位:Cheung Tsun Lok(香港 / S14) タイム:55秒04(911 / ポイント)。
山口は、昨年シンガポールでの世界選手権男子100m平泳ぎSB14で優勝し、日本代表チームで唯一の金メダルを獲得した。大会初日、彼にとってはメイン種目ではない100m自由形であったが、アジアのライバルである香港のTangを力強い泳ぎで制し、王者の貫禄を見せつけて優勝を飾った。

一方、パラリンピックで3つの金メダルを含む14個のメダルを獲得している地元・浜松市出身のベテラン鈴木は、マルチクラスのポイント制ならではの強さを発揮した。予選では、これまで世界を二分して競い合ってきたニュージーランドのCameron Leslie(S4)に競り勝ち決勝へ進出。鈴木は予選の際に「1分23秒台で泳ぐ」と自ら予告していた通りのタイム(1分23秒43)で見事に泳ぎ切り、916ポイントを獲得して3位表彰台に上った。

「静岡のみなさんにも楽しんでもらえるようなレースができるようにがんばりたい」と語るベテランは、有言実行の泳ぎで観客を魅了した。
アジアパラ代表入りを目指す選手たちの活躍
女子200m自由形で堂々の4位に入り、国際舞台で存在感を示したのが新鋭の佐藤璃來(個人/S14)だ。2025年6月にパラ水泳デビューを果たし、今月のワールドシリーズ・ベルリン大会で国際クラス分けを受け、国際大会デビューを果たしたばかりの中学生である。海外勢と堂々と渡り合い自己ベストを更新した佐藤は、ベルリン大会に続く国際舞台で自己ベストを更新し、日本の次世代エース候補として存在感を示した。「速いライバルと競い、自己ベストを出せました。疲労がある中でも最後の猛ダッシュを成功させ、ラストスパートで力を発揮できました。最初の50mを30秒切って入ることができたのも良かったです」と清々しく振り返った。

また、女子100m自由形(予選)に出場した水上真衣(東京ガス/S8)は、1分18秒68のタイムで641ポイントを獲得。マルチクラス形式での決勝には届かなかったものの、目標としていた自身のクラスにおけるアジアパラ派遣標準タイム(A)を見事に突破した。水上が代表に選出されれば、2018年のアジアパラ以来、実に8年ぶりとなる。
「また日本代表で行きたいと思っていたので、派遣基準を突破できてよかった」と喜びを噛み締めた。 さらに、地元・沼津市生まれで2大会連続パラリンピックに出場している芹澤美希香(宮前ドルフィン/S14)も女子100m自由形予選に出場し、1分06秒61で力強く泳ぎ切るなど、県内出身選手の活躍も大会を盛り上げている。
男子200m自由形 A決勝:タイ・香港・日本の三つ巴

こちらもS14クラスの面々が上位を占め、アジアのライバル同士が火花を散らした。
1位:Jeampiriyakul Nithikorn(タイ / S14) タイム:1分58秒13(945ポイント)
2位:村上舜也(日本 / S14) タイム:2分00秒76(907ポイント)
3位:Kumarasing Phakhawat(タイ / S14) タイム:2分01秒00(903ポイント)、同3位:Wong Hon Yin(香港 / S14) タイム:2分01秒00(903ポイント)
タイのJeampiriyakulが抜け出し1位を獲得。それに2位の村上が続き、さらにタイのKumarasingと香港のWongが全く同じタイム・ポイントで同着3位になるという白熱のレース展開となった。アジアパラ大会を見据えた激しいライバル関係がうかがえる。 マルチクラス制のポイントによる戦いと、S14、S4同士など同じクラスの純粋なスピード勝負の両方が楽しめる、パラ水泳ワールドシリーズのインクルーシブな面が大きな魅力となっている。
海外勢の活躍:世界基準のハイレベルな戦い
【コロンビア勢が圧巻】

Carlos Serrano Zarate(COL/S7): 男子50mバタフライA決勝において、29秒21のタイムで「1002ポイント」という驚異的なハイスコアを叩き出し、見事1位に輝いた。
Nelson Crispin Corzo(S6): 同じく男子50mバタフライA決勝に出場し、31秒26のタイムで945ポイントを獲得。Serranoに次ぐ2位に入り、コロンビア勢の圧倒的な強さを見せつけた。
Sara Vargas Blanco(S7): Sara Vargas Blanco(S7):西田杏のライバルとして知られるコロンビアのVargasは、女子50mバタフライA決勝を35秒53(896ポイント)で制した。さらに女子100m自由形A決勝でも1分12秒12(926ポイント)で2位に入るなど、初日から複数種目で存在感を示した。
【テレサ・ペラレスが世界記録】


Teresa Perales(SM2): パラリンピック通算28個のメダルを獲得している50歳の世界的レジェンドが、女子150m個人メドレー予選で4分17秒71という世界記録を叩き出す快挙を達成した。さらにA決勝でも4分26秒09で泳ぎ切り、今大会屈指の高得点である「1050ポイント」を記録して圧倒的な1位を獲得した。
同じレースには、日本のレジェンドとして長年パラ水泳界を支えてきた70歳の加藤作子(SM4)も出場。世界記録を打ち立てたPeralesとともに、ベテランスイマーたちの挑戦が観客を魅了した。
【香港・タイS14勢がアジアパラへ照準】

Lau Chiu Yee(香港/S14): 女子100m自由形A決勝で、1分00秒73(941ポイント)をマークし1位に輝いた。
Tang(香港/S14クラス): 男子100m自由形A決勝で、54秒12(942ポイント)を記録し、日本の山口尚秀(1位)に次ぐ2位に食い込んだ。
Jeampiriyakul(タイ/S14): 男子200m自由形A決勝において、1分58秒13(945ポイント)のタイムで1位を獲得した。
Khajhonmatha(タイ/S14): 女子200m自由形A決勝で、2分13秒59(918ポイント)を記録し、日本の木下あいららを抑えて1位を獲得した。
アジアパラを4か月後に控えた富士・静岡大会。日本代表にとっては代表争いの重要な選考レースであると同時に、香港やタイ、コロンビアなど各国の強豪との現在地を測る舞台でもある。初日から各レーンで繰り広げられたハイレベルな熱戦は、秋の大舞台に向けた戦いの始まりを感じさせた。







