公開: 2026年5月30日 at 6時15分 — 更新: 2026年5月30日 at 12時17分

【大会第1日目レポート】アジアパラへ向けた熱い号砲。新鋭の躍進と王者の力泳が交錯する富士・静岡大会

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2026年5月29日、静岡県立水泳場にて「パラ水泳ワールドシリーズ2026 富士・静岡」が開幕した。秋に控える「愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会」の日本代表選考を兼ねる今大会。初日から、Teresa Perales(SM2)による世界記録、日本勢の躍進、そして世界トップレベルのパフォーマンスが交錯する熱戦が繰り広げられた。

【女子200m自由形予選】復帰後初めての国際レースに臨む木下あいら(日本/S14)。「体力がまだ完全ではなく、どんな感じで泳げるか分からなかったが、今できる全力で泳いだ」と語る通り、気迫の泳ぎで予選をトップ通過した。 写真・秋冨哲生

女子200m自由形 A決勝:わずか0.2秒、2ポイント差の大接戦

同じS14クラス(知的障害)のスイマーたちが直接タイムで競い合う熱い展開となったのが、女子200m自由形だ。タイのKhajhonmatha Nattharineeと日本のエース・木下あいらが激しいトップ争いを繰り広げた。

女子200m自由形の表様式。1位:Khajhonmatha Nattharinee(タイ / S14) タイム:2分13秒59 / ポイント:918、2位:木下あいら(日本 / S14) タイム:2分13秒79 / ポイント:916、3位:Chan Yui Lam(香港 / S14) タイム:2分15秒84 / ポイント:889 写真・秋冨哲生

1位:Khajhonmatha Nattharinee(タイ / S14) タイム:2分13秒59(918ポイント)、2位:木下あいら(日本 / S14) タイム:2分13秒79(916ポイント)、3位:Chan Yui Lam(香港 / S14) タイム:2分15秒84(889ポイント)、4位:佐藤璃來(日本 / S14) タイム:2分17秒67(865ポイント)。
タイのKhajhonmathaにわずか0.2秒差で敗れた木下だが、指定難病である「再生不良性貧血」からの国際復帰戦であり、医師と対話しながら調整しての出場だった。「200m自由形は復帰して初めてで、体力が厳しいレースでした。シーズンの目標はアジアパラでの金メダルですが、少しでもベストに近い泳ぎができればというのが実際の思いです」と、厳しい状況下での確かな手応えを口にした。現在は、現在は個人登録選手として競技を続けている。

男子100m自由形 A決勝:山口、鈴木が共に表彰台へ

日本のエース山口尚秀(四国ガス/S14)と、重度クラスのベテラン鈴木孝幸(ゴールドウイン/S4)が、香港やポーランドの強豪と表彰台を争った。

男子100m自由形の表彰式。1位:山口尚秀(日本 / S14) タイム:53秒45 / ポイント:963、2位:Tang Wai Lok(香港 / S14) タイム:54秒12 / ポイント:942、3位:鈴木孝幸(日本 / S4) タイム:1分23秒43 / ポイント:916 写真・秋冨哲生

1位:山口尚秀(日本 / S14) タイム:53秒45(963ポイント)、2位:Tang Wai Lok(香港 / S14) タイム:54秒12(942ポイント)、3位:鈴木孝幸(日本 / S4) タイム:1分23秒43 (916ポイント)、4位:Cheung Tsun Lok(香港 / S14) タイム:55秒04(911 / ポイント)。

山口は、昨年シンガポールでの世界選手権男子100m平泳ぎSB14で優勝し、日本代表チームで唯一の金メダルを獲得した。大会初日、彼にとってはメイン種目ではない100m自由形であったが、アジアのライバルである香港のTangを力強い泳ぎで制し、王者の貫禄を見せつけて優勝を飾った。

大会初日、香港のTangを制し、王者の貫禄を見せつけ優勝した山口尚秀(四国ガス/ S14) 写真・秋冨哲生

一方、パラリンピックで3つの金メダルを含む14個のメダルを獲得している地元・浜松市出身のベテラン鈴木は、マルチクラスのポイント制ならではの強さを発揮した。予選では、これまで世界を二分して競い合ってきたニュージーランドのCameron Leslie(S4)に競り勝ち決勝へ進出。鈴木は予選の際に「1分23秒台で泳ぐ」と自ら予告していた通りのタイム(1分23秒43)で見事に泳ぎ切り、916ポイントを獲得して3位表彰台に上った。

男子100m自由形で/S4)Cameron Leslie(NZL/S4)と競い合う鈴木孝幸(ゴールドウイン/S4) 写真・秋冨哲生

「静岡のみなさんにも楽しんでもらえるようなレースができるようにがんばりたい」と語るベテランは、有言実行の泳ぎで観客を魅了した。

アジアパラ代表入りを目指す選手たちの活躍

女子200m自由形で堂々の4位に入り、国際舞台で存在感を示したのが新鋭の佐藤璃來(個人/S14)だ。2025年6月にパラ水泳デビューを果たし、今月のワールドシリーズ・ベルリン大会で国際クラス分けを受け、国際大会デビューを果たしたばかりの中学生である。海外勢と堂々と渡り合い自己ベストを更新した佐藤は、ベルリン大会に続く国際舞台で自己ベストを更新し、日本の次世代エース候補として存在感を示した。「速いライバルと競い、自己ベストを出せました。疲労がある中でも最後の猛ダッシュを成功させ、ラストスパートで力を発揮できました。最初の50mを30秒切って入ることができたのも良かったです」と清々しく振り返った。

女子200m自由形A決勝で力泳する佐藤璃來(S14)。海外の強豪と堂々と渡り合い、自己ベストを更新する2分17秒67(865ポイント)で4位に入った。 写真・秋冨哲生

また、女子100m自由形(予選)に出場した水上真衣(東京ガス/S8)は、1分18秒68のタイムで641ポイントを獲得。マルチクラス形式での決勝には届かなかったものの、目標としていた自身のクラスにおけるアジアパラ派遣標準タイム(A)を見事に突破した。水上が代表に選出されれば、2018年のアジアパラ以来、実に8年ぶりとなる。
「また日本代表で行きたいと思っていたので、派遣基準を突破できてよかった」と喜びを噛み締めた。 さらに、地元・沼津市生まれで2大会連続パラリンピックに出場している芹澤美希香(宮前ドルフィン/S14)も女子100m自由形予選に出場し、1分06秒61で力強く泳ぎ切るなど、県内出身選手の活躍も大会を盛り上げている。

男子200m自由形 A決勝:タイ・香港・日本の三つ巴

男子200m自由形の表彰式、1位:Jeampiriyakul Nithikorn(タイ / S14) タイム:1分58秒13(945ポイント)、2位:村上舜也(日本 / S14) タイム:2分00秒76(907ポイント)、3位:Kumarasing Phakhawat(タイ / S14)、タイム:2分01秒00(903ポイント)、同3位:Wong Hon Yin(香港 / S14) タイム:2分01秒00(903ポイント) 写真・秋冨哲生

こちらもS14クラスの面々が上位を占め、アジアのライバル同士が火花を散らした。
1位:Jeampiriyakul Nithikorn(タイ / S14) タイム:1分58秒13(945ポイント)
2位:村上舜也(日本 / S14) タイム:2分00秒76(907ポイント)
3位:Kumarasing Phakhawat(タイ / S14) タイム:2分01秒00(903ポイント)、同3位:Wong Hon Yin(香港 / S14) タイム:2分01秒00(903ポイント)
タイのJeampiriyakulが抜け出し1位を獲得。それに2位の村上が続き、さらにタイのKumarasingと香港のWongが全く同じタイム・ポイントで同着3位になるという白熱のレース展開となった。アジアパラ大会を見据えた激しいライバル関係がうかがえる。 マルチクラス制のポイントによる戦いと、S14、S4同士など同じクラスの純粋なスピード勝負の両方が楽しめる、パラ水泳ワールドシリーズのインクルーシブな面が大きな魅力となっている。

海外勢の活躍:世界基準のハイレベルな戦い

【コロンビア勢が圧巻】

女子50mバタフライA決勝表彰台。中央は35秒53(896ポイント)で優勝したコロンビアのSara Vargas Blanco(S7)。左は2位に入った日本の西田杏(S7)、右は3位のOtom Angel Mae(フィリピン/S5) 写真・秋冨哲生

Carlos Serrano Zarate(COL/S7): 男子50mバタフライA決勝において、29秒21のタイムで「1002ポイント」という驚異的なハイスコアを叩き出し、見事1位に輝いた。
Nelson Crispin Corzo(S6): 同じく男子50mバタフライA決勝に出場し、31秒26のタイムで945ポイントを獲得。Serranoに次ぐ2位に入り、コロンビア勢の圧倒的な強さを見せつけた。
Sara Vargas Blanco(S7): Sara Vargas Blanco(S7):西田杏のライバルとして知られるコロンビアのVargasは、女子50mバタフライA決勝を35秒53(896ポイント)で制した。さらに女子100m自由形A決勝でも1分12秒12(926ポイント)で2位に入るなど、初日から複数種目で存在感を示した。

【テレサ・ペラレスが世界記録】

女子150m個人メドレー表彰台。中央は予選で世界記録を樹立し、決勝でも1050ポイントのハイスコアで優勝したスペインのレジェンド、Teresa Perales(SM2)。左は2位のThongrueang Plaifa(タイ/SM3)、右は3位のLarry Brenda Anellia(マレーシア/SM4) 写真・秋冨哲生
女子150m個人メドレーA決勝のスタートに向けて、介助を受けながら入水するスペインのレジェンド、Teresa Perales(SM2)。このレースでも圧巻の泳ぎを見せ、1050ポイントの高得点で優勝を飾った。 写真・秋冨哲生

Teresa Perales(SM2): パラリンピック通算28個のメダルを獲得している50歳の世界的レジェンドが、女子150m個人メドレー予選で4分17秒71という世界記録を叩き出す快挙を達成した。さらにA決勝でも4分26秒09で泳ぎ切り、今大会屈指の高得点である「1050ポイント」を記録して圧倒的な1位を獲得した。
同じレースには、日本のレジェンドとして長年パラ水泳界を支えてきた70歳の加藤作子(SM4)も出場。世界記録を打ち立てたPeralesとともに、ベテランスイマーたちの挑戦が観客を魅了した。

【香港・タイS14勢がアジアパラへ照準】

女子100m自由形表彰台。中央は1分00秒73(941ポイント)で優勝した香港のLau Chiu Yee(S14)。左は2位のSara Vargas Blanco(コロンビア/S7)、右は3位のOliwia Jablonska(ポーランド/S9)。 写真・秋冨哲生

Lau Chiu Yee(香港/S14): 女子100m自由形A決勝で、1分00秒73(941ポイント)をマークし1位に輝いた。
Tang(香港/S14クラス): 男子100m自由形A決勝で、54秒12(942ポイント)を記録し、日本の山口尚秀(1位)に次ぐ2位に食い込んだ。
Jeampiriyakul(タイ/S14): 男子200m自由形A決勝において、1分58秒13(945ポイント)のタイムで1位を獲得した。

Khajhonmatha(タイ/S14): 女子200m自由形A決勝で、2分13秒59(918ポイント)を記録し、日本の木下あいららを抑えて1位を獲得した。

アジアパラを4か月後に控えた富士・静岡大会。日本代表にとっては代表争いの重要な選考レースであると同時に、香港やタイ、コロンビアなど各国の強豪との現在地を測る舞台でもある。初日から各レーンで繰り広げられたハイレベルな熱戦は、秋の大舞台に向けた戦いの始まりを感じさせた。

オープニングセレモニーでは、2008年北京パラリンピックと2012年ロンドンパラリンピック水泳に出場した、隻腕のヴァイオリニスト伊藤真波さんが演奏した。 写真・秋冨哲生

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