2026年7月9日から10日の2日間にわたり、ひがしんアリーナ(東京都墨田区)にて車いすバスケットボール男子日本代表の国際強化試合「SUMIDA Nations Cup」が東京都の国際スポーツ大会開催支援の助成も受けて実施された。有観客の国際親善試合が行われるのは2019年以来7年ぶりのことで、延べ約2000人が訪れた。今大会には日本のほか、パリ2024パラリンピック(以下、パリ)で銀メダルを獲得し、ヨーロッパ選手権2位と世界上位である強豪・英国と、昨年のアジアオセアニア選手権を勝ち抜き、9月に開催される世界選手権出場を決めているトルコの3カ国が参戦した。世界選手権出場を控える精鋭3カ国による、2回総当たり戦が行われた。
大会2日目となった10日、日本は前日の課題を修正し、卓越した組織力とインサイドへのパスルートを遮断するゾーンディフェンスのような戦術的なアジャストを見せる。第5試合で英国を61-57の接戦の末に退けると、続くトルコ戦でも67-56と終始主導権を握って連勝。初日の戦績と合わせて通算3勝1敗とした日本が、見事ホームの地で優勝の栄冠を掴み取った。
パリ以降の新体制において、世界のトップレベルと互角に渡り合えることを証明した今回の大会。9月に控える世界選手権で「5位入賞」という明確なターゲットを見据える日本代表。決して控えめな目標などではない。世界のトップティアに力ずくで割って入ることを意味する、極めてハードルの高い、そして現実的な野心なのだ。パリパラ以降の新体制において、その高い壁を突破する「戦術の遂行力」と「タフさ」を証明した今回の優勝は、世界選手権のロードマップにおいて、何物にも代えがたい大きな収穫に満ちた2日間となった。
今大会の事実上の優勝決定戦となった日本対英国の一戦。日本の先発は鳥海連志(背番号2 / クラス2.5)、髙柗義伸(背番号4 / クラス4.0)、赤石竜我(背番号8 / クラス2.5)、宮本涼平(背番号18 / クラス1.0)、村上直広(背番号24 / クラス4.0)という、走力と高さを兼ね備えたラインナップ。
試合は序盤から激しい主導権争いが繰り広げられる。先制点を奪った英国に対し、日本もすぐさま応戦してスコアを戻したものの、パリ準優勝の英国も即座にアジャストし、2連続得点で日本を突き放しにかかる。
英国に傾きかけた流れを引き戻したのは、日本の素早いベンチワークだった。古澤拓也(背番号7 / クラス3.0)と秋田啓(背番号25 / クラス3.5)をコートへ投入すると、鋭いパス回しとインサイドでの確実なフィニッシュでじわじわと英国を追い詰め、試合をひっくり返す。激しい一進一退の攻防の末、第1クォーターは15-14と、日本がわずか1点のリードとなった。


迎えた第2クォーター、日本の攻勢がさらに加速する。秋田の確実なシュートに加え、古澤の3ポイントシュートが鮮やかにネットを揺らし、英国を引き離しにかかる。
ここで日本はさらにギアを上げる。赤石、丸山弘毅(背番号5 / クラス2.5)、そして長年日本代表を牽引してきた大黒柱の藤本怜央(背番号13 / クラス4.5)と香西宏昭(背番号55 / クラス3.5)という、経験豊富なユニットを投入。この「ベテラン・レジェンド陣」がコート上で圧倒的なゲームコントロール能力を発揮する。英国のフィジカルなプレッシャーをいなしながら、確実な試合運びでリードをさらに拡大してみせた。
クォーター終盤には、古崎倫太朗(背番号91 / クラス2.5)がコートへ送り込まれた。日本は英国に主導権を渡すことなく、31-26の5点リードで試合を折り返し、ハーフタイムへと突入した。

第3クォーター、日本は鳥海、髙柗、川原凜(背番号6 / クラス1.5)、赤石、秋田の5人をコートへ。この時点で、日本はベンチ登録メンバー全員をコートに送り出した。
しかし、今大会を通じて課題となっていた「後半立ち上がりの悪さ」がここで顔を覗かせる。日本の一瞬の隙を突き、英国が怒涛の3連続得点で試合をひっくり返す。さらに英国のエース、グレッグ・ウォーバートン(背番号12 / クラス2.5)が爆発。強烈な3ポイントシュートを含むクォーター13得点という猛攻を前に、日本は防戦を強いられる。主導権を完全に握られた日本は、41-45と4点のビハインドを背負う。
最終クォーター、互いにシュートを決め合う息詰まる応酬が続く中、一時は英国に6点差までリードを広げられる苦しい展開に。しかし、オフィシャルタイムアウトを挟んで日本のディフェンスの精度が上がる。
反撃の狼煙を上げたのは古澤だった。フリースローを確実に沈めてチームを落ち着かせると、丸山、鳥海が連続得点を挙げて1点差に肉薄。さらに鳥海がフリースローを沈めて、ついに同点に追いつく。
勝敗を分けたのは、勝負所で日本が敷いた英国ゴール前での「ゾーンディフェンス」だった。英国のパッシングレーンを完全に遮断してタフショットを強いると、奪ったポゼッションから一気の4連続得点で英国を突き放し、最終的に、61-57。日本が劇的な逆転劇で事実上の決勝戦を制し、ホームのファンに歓喜をもたらした。

京谷 和幸ヘッドコーチ(以下、京谷HC)は、今回の結果と今後について、「3カ国の国際試合だが優勝は気持ちがいい。結果を出せたことはチームの自信につながる。力が出る選手の組み合わせは見えてきたので、8月の合宿でも連携を高めていきたい。世界選手権は勝負しないといけないが、ロスの通過点でしかないので、その先のロスを見据えてしっかりと作っていきたい」と語った。

今大会のMVPでもある鳥海連志は、「2か国に勝ち切ったということが、まず非常に良かった。日本が試合をコントロールできていた」といい、試合運びについて、「スペインで培ってきた自分のサイドからプランニングしていくという、このゲームを作っていく上での根幹の部分を担えたことは非常に自分にとっては自信になった。周りの選手の得点がしっかりと伸びていくという、今までの日本にはないスタイルみたいなものを1つ作れた。それぞれがそれぞれの地でやってきたことが1つ1つこう歯車になってチームが動いていく姿が見られたと思う。チームがより円滑に、ないし効率的に得点を重ねること、ディフェンスでしのぎ切ること、そのあたりに自分の影響力が及ぶようなバスケットを展開していきたい」と話した。

さらに鳥海は、日本で国際試合ができたことについて、「日本開催はそんなに多くはないが、その中で自分たちが結果を残せたのは、ほんとに普段応援してくださる方たちのおかげ。もう何年も通してずっと応援をしてくださる人たちが、会場に来て、一緒にバスケットを楽しんでくれるっていうのは、僕たちにとってもすごく貴重な時間でした」とファンに感謝の言葉を口にした。

試合結果
GAME1 日本 73-45 トルコ
GAME2 英国 88-50 トルコ
GAME3 英国 72-58 日本
GAME4 トルコ 84-76 英国
GAME5 日本 61-57 英国
GAME6 日本 67-56 トルコ
最終成績
日本 3勝1敗
英国 2勝2敗
トルコ 1勝3敗



(編集・校正 佐々木延江、丸山裕理)






