公開: 2026年9月4日 at 9時16分 — 更新: 2026年9月4日 at 9時38分

Aachen馬術世界選手権・フリースタイル、全グレードで熱戦、80%台続出

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2026年8月23日(現地時間)、ドイツ・アーヘンでのFEIパラ馬術世界選手権の最終日、「グランプリ・フリースタイル」をリモートからレポートした。

2026年8月23日、ドイツ・アーヘンで開催されたFEIパラ馬術世界選手権の最終日に、音楽に合わせて自由に演技を構成する「グランプリ・フリースタイル」が行われた。

グレードIからVまで、グランプリA、B両競技の合計得点上位8人馬が出場。今大会最後となる15個のメダルをかけて、世界のトップライダーが競演した。フリースタイルは規定の動きを取り入れた経路の作成と音楽の選択からが競技といえる。そこから人馬がタイミングをみて呼吸を合わせて演技。規定演技とは違った楽しみと難しさがある。

グレードIII、Rixt van der Horst&Eisma’s Royal Fonq N.O.P.が2冠

グレードIII表彰台
© FEI/Leanjo de Koster

最初に行われたグレードIIIでは、オランダのRixt van der Horst&Eisma’s Royal Fonq N.O.P.(栗毛/11歳/牡/ウェストファーレン)が83.120%という高得点を記録し、金メダルを獲得した。
このコンビは個人競技に続く2冠。音楽との調和を生かした演技でアーヘン大会を最高の形で締めくくった。
「私はフリースタイルが大好きです。Fonqと私を現地そして地元で支えてくれたチームに感謝し、全員をとても誇りに思います」「これ以上ない一週間でした。まるでおとぎ話のなかにいるような感じでした」(van der Horst)

Rixt Van der Holst&Royal Fonq N.O.P
© FEI/Leanjo de Koster

銀メダルはデンマークのTobias Thorning Joergensen&Blue Hors Zackorado(黒毛/10歳/牡/オルデンブルグ)で、79.940%を記録した。2025年に引退をした長年のパートナーJoline Hill(芦毛/18歳/牝/DWB)に代わって新たなパートナーと出場した世界選手権。今後に期待がかかる。
「今日は本当にいい感触でした。スコアは思った通りではありませんでした。でも、彼(Zackorado)にはまったく失望していません。まだ若い馬ですし、これからもっとたくさんいいところを見せてくれると思います。いずれにしても素晴らしい大会でした。このような馬場で競技できたことは、本当に素晴らしい経験になりました。これからZackoradoと歩んでいく未来を楽しみにしています。」

Tobias Thorning Joergensen&Blue Hors Zackorado
© FEI/Leanjo de Koster

銅メダルはイタリアのFrancesca Salvadè&Escari。79.587%で、今大会2度目となる自己ベスト級の演技を披露した。Salvadèは2012年、2016年、2020年、2024年のパラリンピック出場経験をもつ。しかし、ヨーロッパ選手権以外、パラリンピック、世界選手権あわせてメダルを獲得したのは今回が初めて。
「Elmeroとは4年間コンビを組んでいます。本当に素晴らしい若い馬です」「団体戦は2028ロサンゼルス・パラリンピックの出場資格がかかっているので、チームのために精一杯がんばりました」 「個人競技に続いて世界選手権で、もう一つメダルを獲得できて本当にうれしいです。2つの個人メダルと2028年ロサンゼルス・パラリンピックの団体出場資格を手にして帰れるなんて、まったく予想していませんでした。夢のような気持ちです。」(Salvadè)

Francesca Salvadè&Escari
© FEI/Leanjo de Koster

グレードII、Fiona Howard&Diamond Dunesが金メダル

グレードII表彰台© FEI/Leanjo de Koster

グレードIIでは、アメリカのFiona Howard&Diamond Dunes(栗毛/13歳/牡/ハノーバー)が81.866%で金メダルを獲得。

個人競技では惜しくも表彰台を逃したHowardだったが、最終日のフリースタイルで見事に巻き返し、団体金メダルに続く今大会2つ目の金メダルを手にした。

Howardが国際舞台で活躍をはじめたのは2024パリパラリンピック。個人、団体、フリースタイルの3冠をDiamond Dunesとともに達成している。しかし、その後、2025年には足と腎臓の大きな手術、2026年は足の再建手術などを経験し、苦しい時期を過ごした。この状況をものともせず、選考競技に遠征するなどして、見事に復活をとげた。
「自分がどれほど馬に乗ることを恋しく思っていたのか、そして自分にとって馬術を続けることがどれほど大切なのかに気づきました。パラ馬術は、補助具の力を借りながら、自ら障がいを受け入れることができるようにしてくれました。ありのままの自分を受け入れてもらえる場所が見つかったのです」(Howard)
フリースタイル後のコメント:
「今日は彼が本当にすべてを出してくれました。本当に特別な馬です。この一週間を乗り切ってくれたことを、とても誇りに思います。今日は私の筋肉が少し張っていたのですが、Dunesが本当に私をしっかり支えてくれました。」
「まだ何も実感できていません。ここアーヘンという特別な舞台で演技し、3つの金メダルを持ち帰るなんて、私が望んでいたことをはるかに超えています。」

Fiona Howard&Diamond Dunes
© FEI/Leanjo de Koster

銀メダルはイギリスのJemima Green&Fantabulous(栗毛/8歳/セン/オルデンブルグ)。80.933%を記録し、世界選手権初出場で80%台に到達する自己ベストを更新した。
「本当にレベルの高い顔ぶれで、大物選手も何人もいたので、「たぶんまた4位になるんだろうな、それでも十分だと思っていました。そこが私にとって居心地のいい順位なんです。ものすごい高得点がいくつも出るだろうとは思っていましたが、自分がその一人になるとは思っていませんでした。だから、これは本当に信じられない結果です」(Green)

Jemima Green&Fantabulous
© FEI/Leanjo de Koster

銅メダルはドイツのHeidemarie Dresing&Poesie 143(鹿毛/11歳/牝/オルデンブルグ)。80.807%を記録し、地元アーヘンで今大会3個目となるメダルを獲得した。
「今日は本当に素晴らしい感触でした。彼女(Poesie)はまるで踊っているようで、私は演技中ずっと笑顔でした。本当に楽しかったです。演技途中で大きな音がしたのにも大きく影響されれず、良い結果が出せました」(Dresing)

Heidemarie Dresing&Poesie 143
© FEI/Leanjo de Koster

なお、日本チームから唯一フリースタイルに進出した稲葉将(グリーンフィールドE.T )&Dallas(黒毛/13歳/セン/オルデンブルグ)は2番目に演技し、67.960% (8人馬中7位)の成績を収めた。

「最終日ハプニングもありスコアは伸びませんでしたが、これまで取り組んできたこと・いまできることは最大限トライすることができたと思います。大会期間を通じて、すごく貴重な時間を過ごさせていただきました。ここまでサポート・応援していただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。」 (稲葉)

Sho Inaba (JPN) riding Dallas
© FEI/Leanjo de Koster

グレードI、Marie Vonderheyden&Fan Tastico Hが3冠

グレードI表彰台
© FEI/Leanjo de Koster

グレードI、安定した実力でグレードI優勝を決めたのは個人、団体ともに金メダルを獲得したアメリカのMarie Vonderheyden&Fan Tastico H(黒毛/9歳/セン/オルデンブルグ)。驚異の80.540%を叩き出す正確な演技を見せ、本大会で3冠を達成した。
「作曲家がこの馬のためにオリジナルの音楽を作ってくれました。私はそれをとても気に入っています。馬の個性にとてもよく合っているんです。
とてもよく運営された素晴らしいイベントの最後にこのような結果を得られて、最高のフィナーレになりました」(Vonderheyden)

Marie Vonderheyden&Fan Tastico H
© FEI/Leanjo de Koster
Marie Vonderheyden&Fan Tastico H

銀メダルは78.767%を記録したイタリアのSara Morganti&Bond Girl 18(鹿毛/7歳/牝/ハノーバー)。2020年東京、2024年パリの両パラリンピックを含む国際大会で長年トップレベルを走ってきたMorganti。今回は将来を見据えて若馬で出場したが、順調にしあがり、良い結果を残すことができた。

「信じられません。言葉になりません。本当に素晴らしい演技で、ボンド・ガールと一緒に楽しみながら、まるで踊っているような感覚で演技することができました。馬場を出たときは自信がなく、コーチに『この演技で本当にメダルに届くかどうか分からない』と話しました。でも私のなかでは、本当に金メダルに値する演技でした。今回、このレベルの結果を出せるような条件は整っていないと思っていましたが、ボンド・ガールは日に日に良くなってくれました。本当に素晴らしい経験でした。」
「イタリア人として、私は自分たちの国の音楽を使うべきだと思いました。でも、国際的にも通用する音楽にしたかったんです。そう考えると、エンニオ・モリコーネ(映画音楽の巨匠)以上の人はいないでしょう? 私は彼の音楽がとても大好きで、大ファンなんです」(Morganti)

MarieG1GPA-fantastico Sara Morganti&Bond Girl 18
© FEI/Leanjo de Koster

銅メダルはラトビアのRihards Snikus&Rise and Shine(黒毛/6歳/セン/ラトビアンウォームブラッドLWB)で、75.420%を記録した。今回は2020年東京パラリンピックで銀、2024年パリパラリンピックで金をともに獲得したKing of the Dance(鹿毛/18歳/セン/LWB)から乗り替わってまだ経験の浅い若いRise and Shineと新コンビを組んだ。国際大会もまだ2回目ではあるが堂々とした演技。実績のあるライダーだけに今後に期待がかかる。
「Rihardはフリースタイルの達人です」(トレーナー・Agnese Rozite)
「今朝の時点では、こんな結果になるとはまったく予想していませんでした。この大会は、馬(Rise and Shine)にとってまだ2回目の国際大会なんです。だから私たちが望んでいたのは、ただ2人がベストを尽くすことだけでした。それが、期待をはるかに超える結果になりました。」 (Snikus姉 Elina Brigmane)

Rihards Snikus&Rise and Shine
© FEI/Leanjo de Koster

グレードIV、Kate Shoemaker&Vianneが3冠

グレードIV表彰台
© FEI/Leanjo de Koster

グレードIVは、アメリカのKate Shoemaker&Vianne(芦毛/10歳/牝/ハノーバー)が83.305%で堂々の金メダル。
今大会の個人、団体に続く3つ目の金メダルで、ShoemakerもチームメイトのVonderheyden同様、3冠を達成した。
今回のフリースタイルでこのコンビは4湾曲の反対駈歩やフライングチェンジなど難易度の高い演目に挑戦。最後の中央線では予定外の伸長速歩も加わり、観客を沸かせた。

「まだ何も実感できていません。明日になったら夢から目覚めるんじゃないかという感じです。この素晴らしいアーヘンの馬場、歴史あるこの場所で演技できたことは、本当に信じられないほど素晴らしい経験です。ここにいられることだけでも本当に感謝しています。さらに金メダルまで獲得できたなんて、もう雲の上にいるような喜びです。」
「グランプリBの団体競技が終わったあと、速歩でもう少し伸びを出せないかと思い、あまり抑えずにやってみたかったんです。するとVianneは最後までずっとリラックスした状態で私についてきてくれました。」
「大会を通して、今日が一番いい伸長速歩だったと思います。最後のセンターラインでも、遊び心でひとつ追加しました。もともとの構成には入っていなかったのですが、彼女の感触がとても良かったので、やってみよう!と思ったんです。」 (Shoemaker)

Kate Shoemaker&Vianne
© FEI/Leanjo de Koster

銀メダルは78.645%を記録したフランスのAlexia Pittier&Sultan 768(栗毛/11歳/セン/ハノーバー)。世界選手権初出場ながら表彰台を獲得した。
「3種目を通して、彼がどんどん自信をつけていったことがとても嬉しいです。そして今日は、まるで翼が生えたような感覚でした。」 「メダルは素晴らしいご褒美です。でも、私にとって何より大切なのは馬とのつながりであり、彼がどういう気持ちかということです」。(Pittier)

Alexia Pittier&Sultan 768
© FEI/Leanjo de Koster

銅メダルは開催国ドイツのHelen Brandt&Vulkan Vegas IB(鹿毛/8歳/セン/ウェストファーレン)。78.005%で自己ベストを更新し、地元アーヘンで世界選手権初のメダルを手にした。
「言葉がありません。本当に幸せです。アーヘンでメダルを獲るという子どもの頃からの夢が実現するなんて、思ってもいませんでした。」 「私の馬は本当に素晴らしいです。心の底から彼を愛しています。馬場のなかでは、まるで空を飛んでいるような感覚でした。そして、馬とのつながりをしっかり感じることができました。」 (Brandt)

Helen Brandt&Vulkan Vegas IB
© FEI/Leanjo de Koster

グレードV、スウェーデンのLena Malmström&Fabulous Fidelieが初の世界タイトル

グレードV表彰台
© FEI/Leanjo de Koster

最終種目となったグレードVは、スウェーデンのLena Malmström&Fabulous Fidelie(鹿毛/14歳/牝/スウイーディッシュ・ウォームブラッドSWB)が79.675%で金メダルを獲得した。
Fabulous FidelieはMalmström自らが繁殖から携わり、育てた馬。共に過ごしてきた14年間の絆を最高の形で世界に見せることができた。
「メダルは獲れると思っていました。でも、金メダルなんて、とても想像できませんでした。この馬は私を人生で最高の旅をともにしてくれました。そして、その旅はここで終わるのではなく、これからも続いていきます。今この体験が本当に起きていることなのかまだ実感できません。まるで夢の中にいるような気持ちです」(Malmström)

Malmström&Fabulous Fidelie
© FEI/Leanjo de Koster

銀メダルは78.185%を記録したドイツのRegine Mispelkamp&Highlander Delight’s(鹿毛/14歳/セン/KWPN)地元の観客の前で今大会3個目のメダルを獲得した。
「今日は本当に素晴らしかったです。馬の動きの感覚が最高でした」 (Mispelkamp)

Mispelkamp&Highlander Delight’s
© FEI/Leanjo de Koster

そして銅メダルは77.440%を記録した、オランダのBritney de Jong&Caramba N.O.P(鹿毛/19歳/セン/KWPN).。
「今日は本当に素晴らしい感覚でした。私たちは演技を心から楽しむことができました。そして、これまで一緒に過ごした中で最高の時間でした。」 「Carambaがまだ元気で健康なうちに競技を引退してほしいと思っています。だから、今週私たちが一緒に3つのメダルを獲得したうえで、こうして引退させてあげられることは、とても嬉しいことです。」 (de Jong)
2021年からパラ馬術の世界で共に歩んできた人馬。まさに有終の美を飾る結果だった。

Britney de Jong&Caramba N.O.P
© FEI/Leanjo de Koster

アメリカが3つの金メダル、5グレードで世界の頂点が分散

アーヘン大会のフリースタイルでは、アメリカがグレードI、II、IVの3種目を制覇。特にMarie VonderheydenとKate Shoemakerは、個人・団体・フリースタイルの3種目すべてで金メダルを獲得し、圧倒的な大会となった。

一方、グレードIIIはオランダのRixt van der Horst、グレードVはスウェーデンのLena Malmströmが金メダルを獲得。5グレードそれぞれで世界チャンピオンが誕生した

フリースタイルでは、単に技術の正確さだけではなく、音楽と人馬の動きの調和、振付の難度、演技全体の芸術性が評価される。今回も80%を超える得点が複数のグレードで記録され、パラ馬術も馬場馬術と変わらず高いレベルの世界になってきた。

また、今大会では2028年ロサンゼルス・パラリンピックの出場枠もかけられ、アメリカを除く上位7か国が団体出場枠を獲得。
2024年パリ・パラリンピックから2028年ロサンゼルスへ。アーヘンで見られた新しい人馬の台頭と、若馬に乗り替わって進化するベテラン選手たち。次のパラリンピックに向けたパラ馬術界の勢力図を占う大会ともなった。さあこれから1年間は大事な2028年ロサンゼルスパラリンピックの資格取りの期間。今後も目が離せない。

競技結果:
https://www.longinestiming.com/equestrian/2026/fei-world-championships-aachen-aachen/#area42

参考
https://www.fei.org/stories/sport/dressage/triple-gold-usa-para-dressage-freestyle-finale
https://www.fei.org/stories/sport/dressage/fiona-howard-horses-keep-me-going

(校正・佐々木延江)

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