ブラインドサッカー日本代表 アジアの壁を越えられず 準決勝進出逃す

「まずは悔しい」「悔しいですね」「悔しいの一言」「正直悔しい」
試合後のインタビューで、選手たちが最初に発した言葉だ。

 東京パラリンピック5人制サッカー(通称ブラインドサッカー)3日目の8月31日、準決勝進出をかけた大一番、日本対中国戦が行われた。日本は引きわけ以上で準決勝進出、一方の中国は勝たなくてはならない。

黒田智成は中国に徹底的にマークされる 写真・中村”Manto”真人

 点を取らなくてはならない中国は、日本のダイヤモンド型の鉄壁な守備陣形にほころびを生じさせようと、サイドに開いてボールを左右に振る。日本はゴールキーパー佐藤大介と田中章仁を中心したフィールドプレーヤーの連係でシュートコースを限定し隙を与えることはない。しかし前半12分中国の11番ヂュ・ルイミン(朱瑞铭)が左サイドからカットイン、わずかに寄せきらず、ほころびが出たところをゴール右隅に決められてしまう。
 逆に点を取らなくてはならなくなった日本は、黒田智成が徹底的にマークされシュートまで持ち込むことができない。そして前半18分、同じような形で中国の11番が横にドリブル、シュートコースが限定できないなか、今度はゴール左上に蹴りこまれる。2度のわずかなほころびで、日本は前半に2失点してしまう。

日本は2失点目を喫してしまう  写真・中村”Manto”真人

 後半に入りなんとか得点を奪いたい日本は前線からプレスをかけ中国陣内に攻め込み、様々な攻撃の形を見せる。川村怜は浮き球のパスを出す。黒田は右サイドからカットインしてのシュートだけではなく、左サイドや中央でパスを受ける。佐々木ロベルト泉はゴール前まで攻めあがる。コーナーキックでは、田中がクロスに走りこむ。うまくミートすれば良し、そうでなくともディフェンダーを引き連れることによって後方で待つ黒田がフリーでボールが持てる。日本の選手たちは「これまでに取り組んできたことを出しきろうという強い気持ち」でゴールを目指す。かつてこれほど中国を相手に押し込んだことはない。しかし時間は刻々と過ぎていく。
 そして試合終了。日本のメダルへの道は閉ざされた。

攻めあがる佐々木ロベルト泉  写真・中村”Manto”真人

 2008年北京パラリンピックへ向けてブラインドサッカー中国代表の強化がなされて以来、アジア王者の中国がここまで日本を分析、対応策を講じて臨んだ試合はなかった。かつての中国は、複数の超絶技巧のドリブラーが交互に前後左右にドリブルで動き回り、機を見てゴール前に迫るという自分たちのスタイルを貫いていた。中国にとって日本を相手には素のままで十分だった。しかし現在の日本代表は中国からしても、十分な対策を練らないと勝てないと思われるほど強くなった。だが中国にとって、対策を練れば勝てる相手だったとも言えるだろうか。
 黒田も中国の進化を感じていた。「高い技術と戦術を持ったすばらしいチームになっていると感じた。日本の狭いブロックの特徴を崩すためのトレーニングを積んできたのではないかと感じた」
中国はエースのウェイ・ジィェンセン(魏建森)が不在、通常、フィールドプレーヤーは8人登録されるが6人のみの登録、戦力ダウンも予想されたが、キーパーを含めた8人が献身的に戦術を遂行、凄まじい精神力でグループリーグ3試合を戦ってきた。初戦のブラジル戦では、0-3とリードを許そうが足がつろうが激しくディフェンスに行く姿にはある種の畏敬の念さえ感じさせるほどだった。

中国選手と競り合う田中章仁  写真・中村”Manto”真人

 「悔しい」
今度は選手の言葉ではなく、筆者の言葉だ。原稿を書きながら悔しさがこみあげてきた。

 準決勝進出はできなかったが、大会の最後には5位決定戦が待っている。
黒田智成は「目標のメダル獲得はできなかったが、最後は笑顔で、勝利の喜びを多くの人たちと分かち合ってこの大会を終えられたら」と語る。

 そして、パラリンピックが終わってもブラインドサッカーの歴史は続いていく。
「最後に勝つことでブラインドサッカーの未来につながる」とは田中章仁の言葉だ。
 5位決定戦は9月2日11時30分キックオフ、相手はスペインに決まった。

グループA 日本 vs 中国

試合結果

チーム前半後半ゴール
日本000
中国202

0 - 2

グループA フランス vs ブラジル

試合結果

チーム前半後半ゴール
フランス000
ブラジル134

0 - 4

グループA 順位表

順位チーム試合得点失点得失勝点
13300110119
232013306
3310246-23
4300309-90

(校正 望月芳子)

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