関連カテゴリ: ブラインドサッカー, ブラインドサッカー/東京2020, ブラインドスポーツ, ブラサカトップ, 東京, 東京パラムーブメント — 公開: 2021年9月5日 at 6:27 AM — 更新: 2022年9月3日 at 3:37 PM

ブラインドサッカーブラジル5連覇 アルゼンチンは金に届かず

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 9月4日、この時期としてはやや肌寒い曇り空の下、東京パラリンピック5人制サッカー(通称ブラインドサッカー)決勝は、キックオフの時をむかえた。
 最初のシュートはアルゼンチン、フリーキックからマクシミリアーノ・エスピニージョが弾丸シュートを放つが、GKルアン・ゴンサウベスが弾き出す。ブラジルフリーキックからのリカルジーニョのシュートは、アルゼンチンのパディージャが猛烈なシュートブロックを見せる。
 長年戦ってきた南米クラシコ、手の内をよく知る隣国同士の対戦。例えば「リカルド」「ノナート」「チアゴ」というようにアルゼンチンのGKが、ボールを保持しているブラジル選手の名前を声に出せば、守備の中心であるパディージャの脳内には個々の選手の動きがイメージされる。「長年対戦しているので相手の動きは本当によくわかっているし、足の動きもわかっている」のだという。
 拮抗した試合が続くなか、縦への推進力が目立つチアゴ・シウバが一気にゴール前まで上がりシュートを放つがポストに嫌われ、前半は0-0で折り返す。

ゴールを決め歓喜するノナート  by International Blind Sports Federation

 均衡が崩れたのは後半13分、今大会好調のノナート(ライムンド・メンデス)がアルゼンチン選手の間をするすると抜けて左足でゴール右上に蹴りこんだ。「左サイドから2人を抜けた。トライしたことがゴールにつながりました」と自身が振り返ったゴールが生まれた。
 失点はしたものもアルゼンチンのパディージャは「あの瞬間まだ落ち着いていた。時間がまだあるから仲間とともに巻き返そうと思っていた」
 実際、その後右サイドフェンス際でGKからのボールを受けたマキシミリアーノが素早く反転、カットインしてからの強烈なシュートもあったが、GKゴンサウベスが横っ飛び、得点を許さない。途中雨の降りだすなか、時は進みついにタイムアップの時を向かえる。勝者はやはりブラジル、アテネパラリンピック以来の5連覇となった。

強引にシュートを放つマキシミリアーノ   by International Blind Sports Federation

 アルゼンチンのデモンテ監督が「とにかく熾烈で厳しい苦しい試合」と振り返った決勝に、金色の髪で臨んだマキシミリアーノはゴールできなかった理由を問われ「たまたまそういう日ではなかった」と答えた。アルゼンチンは絶対的なストライカーがゴールできなければ勝てなかった。だがブラジルはリカルジーニョがゴールできなくとも、ジェフィーニョが絶不調でも、ノナートがゴールを決めた。ノナートはブラジルチームを「選手層が厚いのでお互いに助け合って、誰が入ってもレベルが落ちない」と評する。そして「助け合うことはとても大事ですので」という言葉を繰り返した。「このコロナ禍で金メダルを獲れてとても感動」しているという。
 今大会は、9時、11時30分キックオフのグループAと、16時30分、19時30分キックオフのグループBでは、体力の消耗にかなり差があった。グループAのブラジルは層の厚さで乗り切ることができた。

 敗れたアルゼンチンのパディージャは「まずは休んで家族とあってリラックスしてそれからまた動き始める。それから24年に向けてがんばっていく」と語った。16年前、首都ブエノスアイレスに来た時はホームレス生活をしていた時期もあるという42歳パディージャの金メダルへの挑戦は続いていく。

チアゴ・シウバに相対するアルゼンチンのパディージャ   by International Blind Sports Federation

 決勝の前には、3位決定戦中国vsモロッコ戦が行われた。
 ゴールは早い時間に生まれた。前半4分モロッコのズハイール・スニスラが中央からいったん左サイドへドリブル、深い踏み込みから長い左足を伸ばして放ったシュートがファーポストに当たりゴールに吸い込まれモロッコが先制。4分後にもスニスラは右サイドからカットインし左足でゴール。さらに前半終了間際には長いストライドの深い切り返しから左足でシュートを放ちハットトリック。後半にも左コーナーキックから横にドリブルしての右足のシュートで4点目。4ゴールのスニスラの活躍でモロッコが中国を下し、銅メダルを手にした。

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大会通算8得点 モロッコのズハイール・スニスラ  by International Blind Sports Federation  

 スニスラは通算8得点。長いストライドを活かし、ディフェンダーの足が届かないポイントからのシュートが際立っていた。
「前回大会では1ゴールしかできなかったが、今回は8ゴールで功績を残すことができた。今回メダルを取れたのは歴史的なこと。アフリカの出場枠が1つしかないが、自分たちが銅メダルを取ったことで出場枠が増えることを祈っている」とスニスラは語った。
モロッコのドリス監督は「2015年の世界選手権、2016年のリオパラリンピックでも最下位だったが、そこからの練習の積み重ねがあってこその銅メダル。6か月間、トレーニングキャンプをおこなったが、朝はビーチで、夜はコートで練習、戦略的なトレーニングも積んだ。中国のこともしっかり分析していた」と語った。

 中国はこれまでの試合と比べると体が重いように感じられた。あと一歩が届かなかったり、シュートを吹かしたり。暑い時間帯での試合が続いた影響もあるように感じた。中国にとっては、エースのウェイ・ジィェンセン(魏建森 WEI Jiansen)が大会直前で離脱したことは大きかった。監督も「彼がいれば活躍してくれただろう」と語る。現在北京の病院に入院中だという。

  3位決定戦で4得点をあげたスニスラが通算8ゴールで今大会得点王。アルゼンチンのマキシミリアーノが7得点。ブラジルのノナトが5得点。中国のヂュ・ルイミン(朱瑞铭)、そして日本の黒田智成が3得点で続く。

 大会総得点は45点。スコアレスドロー、PK戦もなかった。以前にも記事に書いたようにゴールの大きさがフットサル大のゴール(2m×3m)から、フィールドホッケー大のゴール(2.14m×3.66m)になったことも大きいが、攻撃の戦術の幅が広がったことも得点増に起因しているだろう。ブラジルvs中国戦では、リカルジーニョの高速クロスにノナートがダイレクトで合わせる。日本vsスペイン戦では、川村怜浮き球のパスをダイレクトで黒田智成が蹴りこむというスーパーなゴールも生まれた。3年後のパリパラリンピックでは、どんなゴールで魅せてくれるだろうか。
 そのために日本は、アジア予選を勝ち抜けることが前提となる。

川村怜からの浮き球のクロスを直接ゴールに蹴りこむ黒田智成   写真・秋冨哲生

最終日の日程 / 結果

決勝 アルゼンチン vs ブラジル

試合結果

チーム前半後半ゴール
アルゼンチン000
ブラジル011

0 - 1
フルタイム

3位決定戦 中国 vs モロッコ

試合結果

チーム前半後半ゴール
中国000
モロッコ314

0 - 4
フルタイム

(アイキャッチ写真・International Blind Sports Federation)

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