公開: 2025年11月16日 at 8時00分 — 更新: 2025年11月18日 at 8時13分

日本初のデフリンピック開会式! パラからデフへ、つなぐ共生社会のスピリット。

知り・知らせるポイントを100文字で

日本初開催で100周年のデフリンピックが東京で開幕。3000人を超えるデフアスリートがエントリーし、役員・スタッフ3000人を含む合計6000人の過去最大の規模で開催される。

東京2025デフリンピックが15日、東京体育館で開幕した。写真・秋冨哲生

東京2025デフリンピックの開会式が15日、東京体育館で行われ、世界中のデフアスリートが集い、大会の開幕を祝った。

デフリンピック100周年の年

デフリンピックは1924年にフランス・パリで大会がスタートしてから、今年で100周年。日本では初めての自国開催となる。今大会は81の国と地域、それに、ろう者個人中立選手、デフリンピック難民チーム、デフリンピックチームから、合わせて過去最多3081名の選手がエントリー。21競技・209種目の熱戦を繰り広げる。

日本選手団の入場。自国開催で過去最多の268名が出場する。写真・秋冨哲生
選手入場を盛り上げたのは、練馬区聴覚障害者協会の「だいこん連」。阿波踊りの太鼓の響きを身体で感じ、聴者と聴覚障害者が一体となって踊る。写真・秋冨哲生

ろう者の過去から未来を表現。モノクロから色彩へ

今大会は100周年の節目となることから、開会式では「100th Anniversary of Deaflympics」を掲げプログラムを展開。アーティスティックプログラム『100年の1日』では、デフリンピックやろう者を取り巻く100年の歴史を振り返った。手話が禁止され、口語中心の教育を受けて育った時代、人々は白か黒かのモノクロの世界に生きる。

『100年の1日』。人々はモノクロの世界で生きる。写真・秋冨哲生

時を経て、2025年の現代へ。東京の街並みでは段ボールで音を奏でて遊ぶ人たちがいる。色とりどりの衣装を身にまとい、よく見ると、聞こえる人も、聞こえない人もごちゃ混ぜで楽しんでいる。伸び伸びと駆け回った後は手拍子で会場全体を巻き込み、最後は圧巻のユニゾンダンスへ。振り付けには、ハグする、目を合わせる、手を合わせるといった直接的なコミュニケーションが随所に散りばめられた。交流を通して違いを受け入れ、互いに尊重する共生社会への願いが込められているという。

カラフルな衣装で伸び伸びと舞う人々。写真・秋冨哲生
アーティスティックプログラムにはオーディションで選ばれた、ステージパフォーマーと客席パフォーマー129名も出演。会場を大いに盛り上げた。写真・秋冨哲生

デジタルだけでない「情報保障」

式典では、聞こえない・聞こえにくい人を中心にすべての人が式典を楽しめるよう、情報保障にも工夫が凝らされた。会場内のLEDビジョンには手話通訳や日英の字幕が映されたほか、二次元コードをかざすと手持ちのスマートフォンで31言語に対応した字幕を見ることができる。

会場アナウンスが字幕で表示される。写真・秋冨哲生

また、式典会場の入口付近には「アクセシブル窓口」が設けられ、手話通訳のほか音声を多言語の文字で表示する透明ディスプレイやタブレット端末が使われ、文字での案内もなされた。

「アクセシブル窓口」に設けられた、音声を多言語で表示する透明ディスプレイ。写真・秋冨哲生

デジタルの技術だけではない。企業の出展ブースでは「応援メッセージを書くコーナーです」などと手持ちのホワイトボードを使って呼び込みをする人がいた。筆談を使ったり、手話の挨拶をしたりして、声以外でコミュニケーションをとろうとする人もいた。情報保障は人の意識で実現できることを知った。

東京パラから東京デフへ

「ようこそ東京へ!」と手話で挨拶した小池百合子東京都知事。「4年前、東京は二度目のパラリンピックを開催し、共生社会実現への一歩を歩み出した。このデフリンピックでさらに前に向かっていく」と決意。写真・秋冨哲生

ホストシティの東京都は、東京2020パラリンピックの開催以降、さまざまなイベントや大会で共生社会のスピリットを繋いできた。今度はパラリンピックからデフリンピックへ、バトンが渡されたように思う。日本初開催のデフリンピックは、人々や社会にどのようなレガシーを残すのか。

東京2025デフリンピックは11月15日から26日まで。東京、福島、静岡の1都2県、19会場で12日間にわたり熱戦を繰り広げる。

facebook ALBUM; Opening Ceremony
https://www.facebook.com/media/set/?vanity=paraphotoclub&set=a.1290092699823936

(写真取材 秋冨哲生、校正・佐々木延江)

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