準備に追われた日々を経て、いよいよ出発。香港で乗り換え、ミラノへ。パラフォト2026ミラノ・コルティナ取材班として、現地に一番乗りで入った。開会式まで、あと4日。

ボランティアさんの親切

空港から市街へ向かう列車のホームで、2人のボランティアさんが案内してくれた。オリンピックからずっとここで働き続けているベテランのお二人。深夜に仕事を終えたと思えば、早朝には大会関係者を出迎えに来る。それでも旅行者に話しかけられれば、にこやかに対応していた。
「これからコルティナへ行くんですか?ミラノ中央駅から?」
「はい。でも、その前に聖火台を見ておこうと思って」
「それなら駅が違いますよ。Milan Cadorna駅からトラムに乗るといいです」
ありがたいアドバイスに従い、マルペンサ空港からMilan Cadorna駅へ向かった。
1ユーロ、現金のみ
トラムに乗る前に、まずトイレを探す。地下鉄乗り場のそばに有料トイレを発見——1ユーロ、現金のみ。
前回のシンガポール水泳大会も、北京パラも、杭州アジアパラも、ずっとキャッシュレスで乗り切ってきた。今回もそのつもりで現金をほぼ持たずに来てしまった。近くのATMで70ユーロを下ろしたものの、コインがなく、お釣りをもらうことに。お釣り用の小銭をあまり用意していないトイレのスタッフに、少し申し訳ない気持ちになりながら——それだけで思いのほか時間がかかってしまった。到着初日のあるあるだ・・。
Arco della Pace ― 平和の門
気を取り直して、聖火台へ。
目的地は「Arco della Pace(アルコ・デッラ・パーチェ)——平和の門」。4日後の開会式に向けて、聖火を迎える準備がすでに整えられていた。
もともとはナポレオンの凱旋を祝うために建設が始まったアーチだが、完成前にナポレオンが失脚。目的を失った建造物は「平和の門」として生まれ変わった。パリの凱旋門と比べるとコンパクトだが、その数奇な来歴が、なんとも意味深に感じられる。

聖火を待ち、平和を切に願う・・
2026年ミラノ・コルティナ大会に向けて、国連は「オリンピック休戦」を呼びかけた。しかしオリンピックが幕を閉じ、パラリンピックが始まるこのわずかな間に、イスラエルがイランの軍司令官と最高指導者を殺害したと発表した。念入りに準備された作戦。それを「成功」と呼ぶ世界——。
人類は今、どこに向かって歩んでいるのだろうか。
一方、今大会でIPCはIOCとは異なる決断を下した。戦争を続けるロシアとウクライナの選手に対し、中立資格ではなく、国の代表としての参加を認めたのだ。
スポーツは、安全な環境のもとで公平に競い合う場であり、「排除しない」ことを根本に置く。勝敗を超えて、競い合う相手との共生をめざす営みでもある。
異なる人々を包摂することを、半世紀以上にわたって国づくりの根幹に据えてきたイタリア。そのイタリアで開かれるこのパラリンピックは、だからこそ特別な意味を持つのかもしれない。
「排除」か、「共存」か——。
再び灯る聖火を待つArco della Paceをあとに、コルティナへ向かった。







