この日、登壇した3名は、初めての夏のパラリンピックがコロナ禍・東京2020(2021年開催)で、3年後となったパリ2024と、無観客・有観客のパラリンピック2大会連続出場した女性アスリートという共通点をもっている。

アルペンスキー/陸上競技の二刀流で活躍する村岡桃佳(トヨタ自動車)は、冬季パラリンピック平昌、北京では金メダルを含む出場種目全てでメダルを獲得した。
東京・パリ両大会で金メダルを獲得したパラバドミントンの里見紗李奈(NTT都市開発)、そして東京・パリの2大会で日本代表として出場したパラ水泳の西田杏(シロ)と現役トップアスリートが会した。司会は幣紙記者でもあるフリーアナウンサーの久下真以子氏が務め、選手たちとの取材経験を交えながらアットホームに進行した。
それぞれの道のりのリアルと、次なる挑戦
チェアスキー/陸上・村岡桃佳
村岡は、子どものころ車いす陸上から競技に親しみ、陸上の仲間に誘われて雪原を体験し魅了された。「雪原で自由になれるチェアスキーが楽しかったが、決められた距離の旗と旗の間を行き来する競技を始めた時、最初はつまらなかった」と、当時を振り返った。17歳でソチパラリンピックに初出場した村岡は「競技の楽しさ」を深め、スキーだけでなく陸上でも成長したいと願うようになった。
Photo: OIS/Joel Marklund. Handout image supplied by OIS/IOC


しかし、コロナ禍で延期となった東京大会から北京大会まで約半年という短期間での調整は「競技人生で最も過酷だった」という。自身の進路を悩んだ時、「桃佳なら大丈夫」と言葉かけてくれたスキーの先輩の存在が、二刀流で陸上競技を継続する大きなあと押しになった。
バドミントン・里見紗李奈

里見は、高校3年時の事故で車いす生活となった後、父の勧めで始めたバドミントンを通じて、3年で国際舞台に立つまでに成長した。「勝つならぶっちぎりで勝ちたい」と語り、パリ後も休むより先に「次の目標に向かって練習したくなった」と語る。その視線の先には、すでにロサンゼルス大会3連覇の夢がある。

そんな里見に村岡も思わず「どうやって3年間でそこまで?」と質問。「ダブルスで優勝を目指すペアと組み、優勝を目指さなくてはと思った」ことが、2連覇へのトリガーだったという。
水泳・西田杏

西田は、子どもの頃から水泳に親しみ、2013年マレーシアでのアジアユースパラに日本代表として初出場した。順調だったが2018年にルール改正があり、得意だった片手のバタフライの泳法が失格対象となった。その後3年間はフォームの修正と再挑戦を目指す長い時間があった。「自分よりも自分を信じてくれたコーチがいた」と振り返り、再び日本代表として世界と戦えるまでに復帰した。今年9月の世界選手権、そして来年のアジアパラ競技大会を目指している。

女子アスリートが感じた“心の交流”
3人の対談は初だったが、お互いの競技環境やルーティン、先輩や仲間の存在、スタッフのサポート体制の違いについて率直に語り合う時間となった。個人競技ゆえの孤独や、メンタル・コントロールの工夫、観客からの声援が力になることなど、現役アスリートとしての“リアル”が共有された。
最後に西田が「水泳以外の競技の話を聞くことが刺激になった」と話したように、ごく自然な選手同士の横のつながりを生み、集まった観客には競技の壁を超えた“挑戦のかたち”を伝える場となった。久下アナが、観客席に駆けつけた夫の車いすラグビー・羽賀理之を交えた演出で初対談の3人ながらアットホームな雰囲気に包まれていた。