シンガポール・OCBCアクアティックセンターで幕を開ける「トヨタ・パラ水泳世界選手権 シンガポール2025(WPSC25)」は、世界75カ国から585名の選手が集結する。パリ2024パラリンピックから1年、ロサンゼルス2028大会へと続く新たなサイクルの第一歩として、国内外の注目を集め、アジア初の歴史的大会としてパラムーブメントの起点となる。

「楽しむことが一番の目標」 — アリス・タイ(GBR)

パリパラリンピック女子400m自由形SB8銀メダリストのアリス・タイ(GBR)は、「とにかく楽しむことが一番の目標です」と語り、若手選手たちへのメッセージとして、 「スポーツを楽しむことを忘れず、健康を優先するように」と、チームメイトを見守る言葉を口にした。その姿には、先輩としての頼もしさがにじむ。
水が与える「自由」と「喜び」 — ガブリエル・アラウージョ(BRA)

ブラジルのガブリエル・アラウージョ(愛称:ガブリエウジーニョ)は「水泳は最大の自律性と自由を与えてくれる」と語る。
生まれつきの障がいを持つ彼にとって、泳ぐことは生きる情熱そのもの。音楽やダンスのリズムとともに、競争の緊張を楽しさに変える。
自分を信じ、愛していることや楽しんでいることのために戦い続ける価値がある— マイケ・ナオミ・シュワルツ(GER)

両親が日本で教鞭を取っていたことから、横浜で生まれ、生後2年半は日本で暮らしたことがあるという。「愛していることや楽しんでいることのために戦い続ける価値がある」というメッセージを共有する彼女は、日本の辻内彩野(三菱商事)と同じS12(弱視)クラスで出場する。
「挑戦してみること」 — トゥ・ウェイソン(SGP)

地元・シンガポール代表のトゥ・ウェイソンは、シンガポールを代表するS7クラスのパラ競泳選手として、アジア地域におけるパラ水泳の盛り上がりや競技レベルの向上に貢献している。「若く障害のある人々に、とにかく外に出て挑戦してほしい」と語った。
「やってみることで予想を超えた可能性が開ける。挑戦は世界を広げる」と、ホームで戦う喜びと使命感をにじませた。

IPC(国際パラリンピック委員会)のアンドリュー・パーソンズ会長も会場を訪れ、「LA2028でメダルを争う新星たちの姿がここにある」と大会の意義を強調。準備に励むスタッフを激励し、練習に臨む選手たちには気さくに声をかける姿が印象的であった。
社会を動かす「水泳の力」
アリス・タイ選手は、ロンドン2012以降の英国社会の変化を引き合いに「障がい者への視線が保護や同情から対等へと変わった」と語る。シンガポール大会もまた、アジアに新しいムーブメントを広げるきっかけとなるだろうと話す。
ガブリエル・アラウージョ選手は「10年後、15年後に世界中で多くの『ガブリエウジーニョ』が活躍することが夢」と語り、次世代への希望を示した。
バックヤードツアー
この日は、テレサ・ゴー(シンガポールのパラリンピックメダリスト、スイマー)による、「バックヤードツアー」も行われ、OCBCアクアティックセンター、VIPエリア、ファンゾーン、観客用バリアフリー設備、チーム準備エリアなど、パーソンズ会長とともに詳しく内覧した。



これから7日間の熱戦がはじまる!
(写真取材・秋冨哲生 校正・小泉耕平)






