11月14日にサッカー(福島/Jビレッジ会場)、オリエンテーリング競技が開幕した東京デフリンピック、この日は午後4時30分から東京体育館で開会式が行われた。
1万人収容できる東京体育館での開会式に入れるのは、1社2人までと告げられた。幣紙パラフォトは10人の取材班で8名が申請していたが、私は会場の外で同様なファンの声を求め「街角レポート」をすることにした。
1歳になったばかりの息子(かんた)を連れて。

会場についたのは15時半過ぎ。すでに会場前は多くの人で賑わっていた。
開会式のチケットは1500名限定の入場で事前に抽選があった。ここで、会場前に集まった人たちにインタビューをした。
加藤みさとさん(ボランティア)

栃木から来た加藤さんは、大会のボランティアに当選。テニス会場の案内や誘導などを担当する。
手話を習っているきっかけで、デフリンピック興味を持ったとのこと。
ボランティアの当選倍率は6倍以上なので「仲間からうらやましがられた」そう。
泊まりで来ている加藤さんの楽しみは「夜飲むこと!」
そうそう、国際大会はお祭りでもありますからね。
テニス会場で試合準備のひと仕事を終えて開会式会場前に移動し、雰囲気を楽しんでいた。
「ボランティア」「飲み会」と、大会期間を十分堪能して欲しいです。
手話サークルつばさの皆さん

加藤さんのインタビューを終えて振り返ると、ピンクのパーカーを着てインタビューをしているグループを発見。これは、話を聞くしかないと思い近づいてみると、紙でできた(フェイクの)マイクを持っていた。
「インタビューごっこをしてます!」と笑うみなさんは、なんと、大阪から来た手話サークルのメンバーだった。
開会式のチケットは全員とれなかったものの、会場前に集まる海外の聴覚障害者たちと交流をするために飛行機や新幹線で駆けつけていた。
「初めてデフリンピックを日本でやるのはとてもワクワクしている。特にバレーやバスケは大阪出身の強い選手がいるので応援している」と話すつばさの皆さん。
応援だけではなく国際交流の場として集まった皆さんの「大阪パワー」に、関西人の私もとても期待が高まりました!
今井勇太選手(ビーチバレー)の父・庸夫さん

つばさの皆さんの前を、ビーチバレー日本代表選手・今井勇太のお父様・庸夫さんが通りがかった。(知り合いだそう)ちなみに、今井はデフリンピック出場は5回目になる、ベテランアスリート。
庸夫さんも聴覚障害を持っているため、つばさの皆さんに手話通訳を手伝ってもらいインタビュー。
「今までメダルを取ったことはないけど、息子のメダルに期待をしている」と話す庸夫さん、「デフリンピックをきっかけに手話が日本の皆さんに広がってもらえれば」と話していた。
開会式は名前入りのグッズを持って応援したかったけど、チケットは取れなかったそう(家族だから見たかったですよね)。
ご家族の試合の応援、頑張ってください!
チェコのファンの皆さん

チェコの国旗を持ったグループがいたので、勇気を持って話しかけることに。そもそも、聞こえるのかどうか分からないのでまずは話しかけてみると、手話で返してくれた。
近くにいた日本のろう者ファンが間に入ってくれたが、日本人の彼は「チェコ手話は通訳できない」という。
当たり前だが、手話もワールドワイドであることを感じた瞬間である。
とにかく、翻訳アプリで質問を見せて最低限の会話に成功。聞けたのは「観客?関係者?選手の家族?」の1問のみ。
回答は「観客」だった。
快く写真を撮らせてくださり、ありがとうございました!
フランスのデフスポーツスクールの先生・バーバラさん

気を取り直して、フランスの国旗を持ったグループに接触。英語で引率者のバーバラさんと話すことができた。
バーバラさんはフランスのデフスポーツスクールの先生。先生たちと聴覚障害の生徒たちと一緒に、フランスからはるばる観戦に来たという。
彼女らも開会式のチケットを取れなかったが、滞在期間中はサッカーを応援しに福島県も行くとのこと。
昨年の五輪パラの熱気を引き継いでいるというフランスの皆さん、熱~い応援を日本でもよろしくお願いします!
YouTuber「大江戸芸人トンチンカン」のチンさん

何やらちょんまげに着物姿の目立つ人物が…近づいてみると、YouTuberの女性であることが判明。
「大江戸芸人トンチンカン」という3人組のアカウントでYouTubeやSNSで街の様子や店の紹介などの地域の情報発信を5~6年前からしているそう。
これまでも国際大会ではちょんまげ姿で応援に登場。かなり目立つので海外の人たちからも話しかけられるとのこと。
地域のムーブメントをぜひ担ってください!
応援だけでなく、「交流の場に」
今回話を聞いた人たちは全員チケットを持っていなかった。にもかかわらず、会場前には多くの人々が駆けつけていた。
目的は、「国内外の聴覚障害者と交流をすること」。ただデフリンピックを観戦するだけでなく、そこに生まれる交流の輪を楽しみにしている人が多かったのが印象的だった。
パラリンピックもデフリンピックも、「福祉の一環」ではなく「スポーツ」として成熟することがずっと求められている一方、障害への理解が深まる「きっかけ」にもなるのが事実だ。
自国開催のデフリンピックをきっかけに、「デフリンピック・ムーブメント」が巻き起こることを期待したい。
(撮影・川村翼 取材協力・佐々木延江)






